セッション情報 パネルディスカッション9

非代償性肝硬変の合併症と予後

タイトル PD9-3:

近赤外線トポグラフィによる肝性脳症診断法の展開

演者 中西 裕之(武蔵野赤十字病院消化器科)
共同演者 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院消化器科), 泉 並木(武蔵野赤十字病院消化器科)
抄録 【目的】肝硬変に伴うミニマル肝性脳症は交通事故と関連があり対策が急務であるが,その診断法は確立されていない.今回,NP testおよび近赤外線トポグラフィーによるミニマル肝性脳症診断それぞれの臨床的意義について検証した.【方法】対象は当科で加療した肝硬変51例.平均年齢69.4±9.9歳,男女比24:27,背景肝疾患はHCV30例,HBV2例,非B非C19例である.近赤外線トポグラフィーによる課題負荷時の脳機能画像診断および脳波検査を施行し,そのうち18例ではNPtestを同日に施行し,その有用性を評価した.【結果】NP testの各項目の検査完遂率はNumber connection test A,Bで18/18(100%)だが時間切れが3例,Figure position test 17/18(94.4%),Digit symbol test 7/18(38.9%),Block design test 18/18(100%),Reaction time test A-C 18/18(100%)だが検査の趣旨を理解不十分3例であった.一方で近赤外線トポグラフィーは年齢に関わらず51例全例で検査可能であった.NPtestのうち,Number connection test Aは近赤外線トポグラフィー結果と相関を認め(p=0.017,R=-0.578),脳機能を反映しているものと考えられた.脳波所見上基礎律動徐波化あり群vsなし群での課題開始10秒の脳局所の酸素化ヘモグロビン濃度上昇は0.08±0.07 vs 0.19±0.17mMmmであり,脳波異常を呈する群で有意に脳機能低下が示唆され(p<0.01),ミニマル肝性脳症と考えられた.脳機能良好群vs不良群における生命予後は1年100%vs83.7%,3年92.9%vs71.7%であった.【結論】NP testのうち,digit symbol testは高齢者では完遂困難であった.NIRSは年齢に関わらず有用であり,今後,両者を併用したミニマル肝性脳症の診断法の確立が期待される.
索引用語