セッション情報 パネルディスカッション9

非代償性肝硬変の合併症と予後

タイトル PD9-4:

バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(BRTO)による肝機能改善効果について

演者 岩本 拓也(山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学)
共同演者 石川 剛(山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学), 坂井田 功(山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学)
抄録 【目的】バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)は胃腎シャントを伴う孤立性胃静脈瘤に対する有効な治療法として報告されてきた.今回我々はB-RTOによってもたらされる肝機能改善効果について検討する.【方法】2008年1月~2011年11月に当科で施行したB-RTO26症例(平均年齢68.0歳,男:女=17:9,HCV:アルコール:NASH:その他=12:7:3:4,Child-Pugh分類A:B=15:11)を対象とし,血液生化学検査・ドップラー超音波検査・造影CT検査・エラストグラフィ・上部消化管内視鏡検査などにより3ヶ月間経過観察して胃静脈瘤に対する効果および肝機能に及ぼす影響を評価した.【成績】全例において胃静脈瘤は3ヶ月後に消退し,術前後で肝静脈楔入圧が251.4→322.9mmH2Oに上昇したものの重篤な続発症は認められなかった.術後1週間で門脈血流量増加(934.1→1176.4mL/min)に伴って肝弾性値上昇(28.4→30.4kPa)と肝容積増大(1043.9→1148.3cm3)が認められた.Child-Pugh scoreは3ヶ月間で6.38→5.68点に低下し,肝合成能を反映する血清アルブミン値(3.48→3.73g/dl)・コリンエステラーゼ値(171.4→182.5IU/L)・プロトロンビン%(72.1→80.0%)はいずれも有意に上昇した.また血清アンモニア値(59.1→35.5μmol/L)及びICG-R15(32.8→26.4%)の低下とBTR(3.76→4.25)の上昇が認められ,代謝・排泄能も明らかに改善した.一方肝線維化マーカーであるヒアルロン酸(374.8→321.4ng/ml)・4型コラーゲン7s(8.7→8.3ng/ml)・P3P(1.22→1.06U/ml)はいずれも減少し,さらにはインスリン抵抗性の指標であるHOMA-IR(4.26→3.30)も低下傾向を示した.【結論】B-RTOにより門脈血流量及び肝容積が増加し,それに伴って肝合成能・代謝能のみならず肝線維化や耐糖能に対する改善効果がもたらされることが示唆された.
索引用語