セッション情報 パネルディスカッション9

非代償性肝硬変の合併症と予後

タイトル PD9-5:

特発性細菌性腹膜炎診断におけるin-situ hybridization法の有用性に関する検討

演者 榎本 平之(兵庫医科大学内科学肝・胆・膵科)
共同演者 井上 慎一(扶桑薬品研究開発センター), 西口 修平(兵庫医科大学内科学肝・胆・膵科)
抄録 【背景】特発性細菌性腹膜炎(SBP)は肝硬変患者の重篤な合併症であるが,起因菌の検出率は低く,通常は腹水中の多核白血球数で診断される.我々はin-situ hybridization(ISH)法で腹水白血球中に貪食された細菌DNAを検出し,細菌感染としての直接的な根拠を与えうることを報告した.一方種々の感染症において16SリボソームDNAに対するPCRで細菌感染を証明する試みもある.今回腹水好中球数測定,16SゲノムへのPCRとの比較を通じISH法のSBP診断における意義を検討した.【方法】(1)肝硬変患者58例を対象に腹水白血球数を測定し,また腹水100-200mLより得られた白血球を塗抹・固定し,全細菌を認識するGBプローブ(Global bacteria)によるISH法での白血球中の細菌DNA検出を試みた.また一部症例に対して16SへのPCRを行った.【結果】(1)癌性腹膜炎・抗菌薬投与7例を除いた51例のうち11例がSBPと診断され,培養検査では3例のみが陽性であったがISH法では10例で細菌DNAが証明された.また非SBP40症例に関してはISH法・培養とも全て陰性であった.(2)SBP診断検討除外例では,肝硬変に合併した癌性腹膜炎症例では腹水好中球数が高値でもISH法により細菌感染を否定できた.また抗菌薬投与中のSBP症例では,白血球数が低値となっていてもISH法で陽性を示す例が存在した.(3)16SへのPCRではホットスタートによる高感度PCRを行うと,非SBP腹水でも検討した全例でシグナルが検出された.【結語】腹水好中球数のみでは細菌感染の有無が判別困難な症例でもISH法は鑑別に有用であった.一方高感度16S-PCRは特異性が低く,細菌感染の診断には不適と考えられた.SBP症例の腹腔内における細菌侵入と白血球による貪食という病態を反映するISH法は,有用な診断手法となることが示唆された.
索引用語