セッション情報 パネルディスカッション9

非代償性肝硬変の合併症と予後

タイトル PD9-6:

難治性胸腹水合併肝硬変に対する腹水濾過濃縮再静注施行26例の検討

演者 石原 知明(四日市消化器病センター消化器・肝臓内科)
共同演者 岩佐 元雄(三重大消化器・肝臓内科), 竹井 謙之(三重大消化器・肝臓内科)
抄録 【目的】肝硬変合併胸腹水は排液後も容易に再貯留したり,肝内門脈肝静脈シャントや腹腔静脈シャント等は手技に熟練を要し治療に難渋する事が多い.腹水濾過濃縮再静注法(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy,CART)は低侵襲で,施行直後から苦痛を軽減するため当院では早期から施行し,CART後無貯留例や高度肝不全で良好なQOLを維持し得る症例を経験した.今回CART前後での検査値に与える影響,長期予後を検討した.【方法】対象は2008年4月から2012年8月までに利尿剤,アルブミン(Alb)投与のみでは胸腹水の改善が得られず,食欲不振や呼吸困難等で通院困難となった難治性胸腹水合併肝硬変患者26名(HBV/HCV/NBNC=3/18/5).CARTは可能な限り全量排液採取するが,循環動態への影響が懸念される場合は2回に分けて1クールとした(延べ80回・68クール(腹水/胸水=59/9)施行).短期的評価は,施行前と翌日のAlb,PT,T-Bil,脳症,食事量の変化,長期的効果として,無貯留例の検討,再貯留までの期間,死因の調査を行った.【成績】平均排液量は4630ml,最多施行例は402日間で15クールであった.Alb値の変化は2.90±0.49から2.86±0.43g/dl,PTは81.18±14.55から80.49±13.04%,T-Bilは1.68±0.95から1.78±1.95mg/dlで,前後で有意差はなかった.脳症悪化例や,腎不全に至る症例もなかった.全例施行直後から自覚症状が改善し,施行直前食事不能であった23回のうちの15回(65%)は,施行後5日以内に全量摂取可能となった.1クールのみのCARTで以後再貯留がなかった症例が8例あり,最長2年4ヶ月(2年以上3例,1年以上2例)の間QOLが保たれた.再貯留例の平均再貯留期間は41日(最短6,最長241日)であった.追跡期間中死亡は11例で,CARTによる直接死因はなかった.【結論】CARTは高度肝不全例でも安全に治療可能で,長期間腹水再貯留を来たさない症例がみられるなど患者のQOL維持に寄与する.
索引用語