セッション情報 パネルディスカッション9

非代償性肝硬変の合併症と予後

タイトル PD9-7:

末期肝硬変に伴う難治性腹水に対するデンバーシャント療法の検討

演者 木田 明彦(富山県立中央病院内科)
共同演者 荻野 英朗(富山県立中央病院内科), 野田 八嗣(富山県立中央病院内科)
抄録 【目的】末期肝硬変に伴う難治性腹水に対して,腹腔-静脈シャント(デンバーシャント)療法の臨床的有用性について検討した.【対象と方法】過去12年間に,何らかの理由で肝移植できず当院でデンバーシャント療法を施行した末期肝硬変症例32例のうち,術後経過を追跡し得た30例を対象とした.シャント留置時年齢中央値は64.5歳,男性20人,女性10人であった.肝硬変の原因はウイルス性17例,非ウイルス性13例で,11例(36.7%)は肝細胞癌(HCC)を合併していた.検討項目は,生存期間,在宅移行率と在宅期間,予後に影響する因子,術後の合併症とした.【結果】生存期間中央値は220日,在宅移行率は86.7%(30例中26例)で在宅期間中央値は120.5日であった.シャント留置後5ヶ月以内の死亡を予後不良とすると,予後良好21例/不良9例であった.予後不良群は,全例進行したHCCを合併し9例中7例がウイルス性であった.静脈瘤,脳症既往,心機能低下,腎機能異常の有無については両群で差を認めなかった.血液検査では,予後不良群で,肝胆道系酵素が高い傾向にあった.予後良好/不良群における観察期間に対する平均総在宅日数の割合(中央値比較)は76.3%/34.7%であった.術後早期合併症としては,重複を含め,消化管出血を8例(26.7%),肝性脳症増悪を9例(30%),腹膜炎を7例(23.3%),DICを8例(26.7%),心不全を2例(6.7%)に認めたが,対症療法にてコントロール可能であった.術後早期死亡を1例に認め,HCC合併例であり,術後6日目に出血傾向に伴う腹腔内出血と肝不全にて死亡した.シャント留置後の後期合併症としては2例にシャント閉塞,1例に創部の反復離開,1例に挿入部感染を認めた.現在のところ30例中26例が死亡しており,死因は殆どが肝不全や消化管出血であった.【結語】末期肝硬変に伴う難治性腹水に対するデンバーシャント療法は,進行したHCC合併例を除けば,治療効果発現が早く在宅移行も可能となりQOL改善に効果的であった.術後合併症については,適切な治療を行うことで制御可能であった.
索引用語