セッション情報 パネルディスカッション9

非代償性肝硬変の合併症と予後

タイトル PD9-8:

肝硬変における心エコー所見とその有用性について

演者 竹井 大介(岡山大学病院消化器内科)
共同演者 高木 章乃夫(岡山大学病院消化器内科), 草野 研吾(岡山大学病院循環器内科)
抄録 【目的】肝硬変においては二次性肝硬変の原因としての心疾患や,肝肺症候群・門脈肺高血圧など肝硬変に伴う心機能異常を合併する場合がある.しかし,呼吸困難などの症状が生じない限り肝臓病日常診療の中で心臓精査を行うことは稀である.そのため,本邦症例におけるこれらの肝硬変随伴心症候についての頻度・程度などは十分な検討がなされていない.【方法】当院にて生体肝移植術前あるいは脳死肝移植登録前検査として行った67例の心エコー所見に関して臨床所見との関連につき検討を行った.【結果】男性37人,女性30人.MELDスコア中央値15.中程度以上の三尖弁逆流を27.8%,僧房弁逆流を13.6%に認めた.また各種指標の中央値は,EF71%,心拍出量4.8L/min,左房径37.5mm,三尖弁逆流圧較差(TR-PG)25mmHgであり,左房径,三尖弁逆流圧較差が大きい傾向にあった.左房拡張に関連する因子は心拍出量の増大,MELDスコア高値があげられた.肺高血圧(TR-PG≧35mmHg)症例を13.8%の症例に認めたが,有意な臨床データの相違は認めなかった.臨床上治療を要する病態であった症例は3例認めた.3例ともC型肝硬変で,内訳は1)心室中隔欠損症手術既往による肺動脈弁下部狭窄,2)心房中隔欠損症による肺高血圧,3)門脈肺高血圧,であった.【結論】本邦においてもMELD15点程度の非代償性肝硬変においてはHyperdynamic Circulationを基礎とした潜在的肺内シャントの影響により左房拡張が,また肺高血圧によるTR-PG上昇が認められるものと思われた.原病以外に心疾患が病態進展に影響している場合や肝硬変に伴う呼吸循環器異常を合併している場合もあり,慢性肝疾患患者において心エコーによる循環器スクリーニング検査が推奨される.
索引用語