セッション情報 パネルディスカッション9

非代償性肝硬変の合併症と予後

タイトル PD9-9:

持続血糖測定装置(CGMS)を用いた肝硬変の糖代謝解析および平均血糖推定式の作成

演者 井手 康史(佐賀大学医学部肝臓・糖尿病・内分泌内科)
共同演者 磯田 広史(国立病院機構嬉野医療センター消化器内科), 水田 敏彦(佐賀大学医学部肝臓・糖尿病・内分泌内科)
抄録 【背景】肝硬変患者の多くは糖代謝異常を有しており糖尿病の合併率は非常に高い.肝硬変にみられる空腹時低血糖は蛋白異化を促進し,高血糖は発癌へ関与する可能性もあることから,厳格な血糖コントロールが望まれる.しかし肝硬変患者においては,一般的に糖尿病のマーカーとして用いられるHbA1cやグリコアルブミン(GA)は脾機能亢進や蛋白合成能低下などのために平均血糖(M-BG)を正確に反映しないことが多く,糖尿病治療を行う上での妨げとなっている.今回我々は持続血糖測定装置(CGMS)を用いて肝硬変患者の糖代謝解析を行い,M-BGの推定式の作成を試みた.
【方法】対象は肝硬変患者27名.男性13名,平均年齢68.7歳(35-84歳),病因はB型2例,C型17例,アルコール性2例,NASH5例,その他1例であり,Child-Pugh Aが14例,Bが11例であった.CGMS system Gold(Medtronic社)を5日間装着して日内血糖変動の評価を行い,一般的な肝機能検査と糖代謝マーカーからStepwise regression法にてM-BG推定式を作成した.
【結果】HbA1c(JDS)は5.8%未満が21例,5.8-6.4%が2例,6.5%以上が4例であった.6例に夜間低血糖(70mg/dl未満)を認め,最高血糖が200mg/dl以上となったものが11例あった.CGMSで得られた平均血糖とHbA1c,GAはいずれも正の相関(HbA1c:r=0.411,GA:r=0.675)を認めたがばらつきが目立った.血清アルブミン値(Alb)と平均血糖には負の相関(r=-0.271)がみられ,Child-Pugh score増加に伴い平均血糖が上昇する傾向にあった.M-BG推定式にはAlb,HbおよびHbA1cが採用され,M-BG=219.3+19.7×HbA1c(JDS)-8.55×Hb-24.15×Alb(R2=0.572)となった.
【考察】肝予備能を考慮した推定式を用いることで肝硬変患者のM-BGをより正確に評価でき,血糖コントロールの指標に有用であると考えられた.
索引用語