セッション情報 パネルディスカッション9

非代償性肝硬変の合併症と予後

タイトル PD9-10:

非代償性肝硬変におけるサルコペニアと栄養療法の意義

演者 海道 利実(京都大学肝胆膵移植外科学)
共同演者 藤本 康弘(京都大学肝胆膵移植外科学), 上本 伸二(京都大学肝胆膵移植外科学)
抄録 【目的】非代償性肝硬変患者の多くはタンパク質エネルギー低栄養状態にあり,筋肉量低下すなわち二次性サルコペニアを伴う.しかし,非代償性肝硬変に対する最終的な治療法である肝移植におけるサルコペニアの意義は明らかではない.そこで,肝移植におけるサルコペニアと栄養療法の意義について検討した.
【方法】対象は2008年2月から2012年4月までに当科で肝移植を施行し,術前に体成分分析装置(InBody720)にて骨格筋量を測定し得た124例.1)術前骨格筋量(標準比),2)骨格筋量と各種パラメーター(年齢,性別,総リンパ球数,プレアルブミン,亜鉛,Child-Pugh分類,MELDスコア,体細胞量)との相関,3)術前低骨格筋量群(90%未満,n=47)と正常/高骨格筋量群(90%以上,n=77)別生存率,4)各群における周術期栄養療法有無別生存率,5)死亡危険因子(術前・術中因子)を検討した.統計学的解析として,相関係数はPearsonの相関係数を,群間比較はχ2乗検定,Mann-Whitney U検定,ANOVA検定を,生存率比較はLog-rank検定を用い,多変量解析(名義ロジステックモデル)にて独立予後因子を検討した.
【結果】1)術前骨格筋量の中央値は92%(67-130%)で,47例(38%)が標準値(90-110%)未満.2)術前骨格筋量はBTRと有意な負の相関を,体細胞量と有意な正の相関を認めたが,他のパラメーターとは有意な相関を認めず.3)低骨格筋量群は正常/高骨格筋量群に比べ,有意に生存率が低かった(p<0.001).4)周術期栄養介入により,低骨格筋量群においても生存率が有意に改善(p=0.010)し,正常/高骨格筋量群でも軽度改善した.5)術前低骨格筋量と低体細胞量が独立予後因子.
【結語】肝移植においてサルコペニアは独立予後因子であり,骨格筋量を含めた術前全身評価の重要性が示された.しかしサルコペニア症例においても,周術期栄養療法は予後改善に有用であった.
索引用語