セッション情報 パネルディスカッション9

非代償性肝硬変の合併症と予後

タイトル PD9-11:

BCAAの肝発癌と予後におよぼす影響

演者 川口 巧(久留米大学内科学講座消化器内科部門・消化器疾患情報講座DELIMITER肝と栄養の会)
共同演者 森脇 久隆(岐阜大学大学院医学研究科消化器病態学DELIMITER肝と栄養の会), 鈴木 一幸(岩手医科大学内科学講座消化器・肝臓内科分野DELIMITER肝と栄養の会)
抄録 【目的】BCAA製剤は,肝硬変患者の低アルブミン血症や肝性脳症に対し有用な治療薬であるが,重篤な合併症への有用性は未だ明らかではない.本研究の目的は,BCAA製剤の肝発癌と予後におよぼす影響を検討することである.
【方法】2009年,肝癌未発症の肝硬変患者299名を全国14施設より登録し,血液生化学検査やBCAA製剤(BCAA顆粒製剤・肝不全用経腸栄養剤)に関するデータを2011年迄収集した.3年間の観察期間中に37名が脱落し,262名を解析対象とした(BCAA投与群68名,BCAA非投与群194名).イベントは肝発癌もしくは死亡と定義し,累積イベント発症率をKaplan-Meier法にて検討した.また,イベント発症に関与する因子を多変量解析にて検討した.
【成績】観察期間の中央値は733日(144-1069日)で,総イベント数は68(肝発癌48名,死亡18名)であった.BCAA投与群と非投与群の間に年齢,性別,BMI,AFP値は有意差を認めなかったが,BCAA群のアルブミン値は有意に低値であり,アンモニア値は有意に高値であった.一方,BCAA投与群のイベント発症率は,非投与群と比較し,有意に低率であった(P=0.04).また,イベントを死亡に限定した副解析では,BCAA投与群の生存率は,非投与群と比較し,有意に高率であった(P=0.03).多変量解析においてイベント発症に関与する因子を検討したところ,「AFP値」,「BCAA/Tyr比」,「BCAA製剤投与の有無」が独立因子として同定された(AFP;HR 15.68,95%CI 2.89-71.77,P=0.002,BCAA/Tyr;HR 0.37,95%CI 0.17-0.79,P=0.01,BCAA製剤;HR 0.37,95%CI 0.17-0.79,P=0.01).
【結論】本研究により,BCAA/Tyr比は,肝硬変患者における肝発癌や死亡といった重篤なイベント発症に関与することが明らかとなった.また,BCAA製剤の投与が肝発癌抑制と予後改善に寄与する可能性が示唆された.
索引用語