抄録 |
【目的】Telaprevir(TVR)併用療法は高い治癒率が期待されるが,難治例では薬剤耐性の問題が存在する.今回は肝発癌/薬剤耐性リスクを考慮した難治例の治療選択と,deep sequencerによる耐性変異検出の有用性を検討する.【方法】[検討1]当院でPEG-IFN/RBV/TVR併用(T12PR24)を導入されたHCV-1の284例中SVR判定可能な61例から難治要因を検討.[検討2]検討1の対象中,HCV-1bの前治療無効14例における耐性変異(V36A/M/L/G,T54A/S,R155K/T/I/M/G/L/S/Q,A156V/T/S/I/G,V170A)をdeep sequencerで検討.Ion PGMTM(Life Technologies)を用い,HCV Plasmid DNAの変異出現率を基準に0.2%以上を有意な変異とした.【結果】[検討1]SVR率70%(初回治療76%,前治療再燃90%,前治療無効27%).多変量解析でSVR予測因子はIL28B TTとCore aa70 Wildが抽出された.前治療無効で前治療Null responderまたはaa70 MutantからSVRは確認されず.前治療無効でAFP高値例は治療終了時RNA陽性で耐性変異も確認された.この様に難治例には肝発癌リスクが高い症例(AFP高値,aa70 Mutant)が含まれていた.[検討2]治療前耐性変異の頻度はdirect sequenceで7%(1/14例,T54S)であった.deep sequenceでaa36/54/155/156/170のアミノ酸は14例の中央値で45,986/62,435/23,096/25,818/35,726 Coverage数が評価可能であった.deep sequenceの治療前耐性変異の頻度は21%(3/14例)で,V36A(27,915 Coverage中の0.2%),T54S(33,830 Coverage中の99.9%),V170A(29,881 Coverage中の0.4%)の3例であった.これら3例は何れもSVRに至らなかったが,3剤併用中のRNAは陰性化を達成.RNA再上昇時にdirect sequenceで顕在化したのはT54A,R155K,A156Tで,治療前と異なる新規耐性変異が主体であった.【結論】TVR難治で肝発癌リスクも高い症例は次世代治療まで肝発癌予防のIFN療法を行う必要がある.deep sequencerは微量な治療前耐性変異の検出に有用であるが,臨床的有用性に関しては更なる検討を要する. |