セッション情報 ワークショップ1

C型肝炎治療困難例への対策

タイトル W1-10:

65歳以上の高齢者における発癌リスク因子と,ペグインターフェロン単独投与による予後改善効果の検討

演者 鈴木 祥子(武蔵野赤十字病院消化器科)
共同演者 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院消化器科), 泉 並木(武蔵野赤十字病院消化器科)
抄録 【目的】テラプレビルを含む3剤併用療法によりウイルス学的著効率は向上したが,65歳以上の高齢者においては副作用の観点から同療法を施行することは困難である.これらの症例に対しても有効な新規治療薬が期待されるが,発癌リスクの高い症例においては治療待機中の発癌を抑止するための対策も必要である.本研究では65歳以上の高齢者における発癌リスク因子を分析し,PEG-IFN単独療法による発癌抑止効果を検討した.
【方法】1.65歳以上のC型慢性肝炎301例を対象とし,高齢者における発癌リスク因子について解析した.2.PEG-IFNを1年以上単独投与した142例を対象とし,治療による発癌リスク因子の改善効果と,それによる発癌抑止効果について検討した.
【成績】1.平均観察期間4.9年(1.0年-14.5年)で44例(14.6%)が発癌した.発癌と関連する観察開始時の因子は,AFP 10ng/ml以上(Hazard ratio(HR)2.14,95%CI 1.04-4.41,p=0.035),ALT 41 IU/l以上(HR 2.99,95%CI 1.34-6.33,p=0.005),血小板数15万未満(HR 3.44,95%CI 1.41-8.38)であった.2.PEG-IFN治療例のうち,AFP 10ng/ml以上は32%,41 IU/l以上は73%であったが,治療中に44%の症例でAFPが10ng/ml未満に低下し,47%の症例でALT値が40IU/l以下に低下した.年齢とAFP,ALTの低下率には関連がなかった.治療中のALT40IU/l以下は発癌リスクが約1/6(HR 0.15,95%CI 0.03-0.69,P=0.014)と有意に低く,AFP 10ng/ml未満は発癌リスクが約1/3(HR 0.37,95%CI 0.13-1.06,P=0.06)と低い傾向を認めた.65歳以上の高齢者に限定しても,治療中のALT40IU/l以下は発癌リスクが約1/10(HR 0.10,95%CI 0.01-0.77,P=0.027)と有意に低かった.
【結論】高齢者のなかでも血小板低値,ALT・AFP高値は発癌リスクがある.PEG-IFN長期療法でALTを40以下にすることで発癌リスクは低下したことから,発癌リスクの高い高齢者で治療待機する場合には,ALT低下を指標としたPEG-IFN単独治療も選択肢となる.
索引用語