セッション情報 ワークショップ2

HBVジェノタイプとB型肝炎の病態

タイトル W2-5:

当院におけるB型慢性肝炎GenotypeA症例の検討

演者 河野 聡(北九州市立医療センター内科)
共同演者 野村 秀幸(新小倉病院肝臓病センター), 下田 慎治(九州大学病態修復内科)
抄録 【背景】HBVのGenotypeはHBV慢性感染患者の経過・治療に大きな影響を及ぼす.HBV Genotype Aは近年になり特殊な集団での急性感染からの慢性化が注目されている.しかし,以前からHBV慢性感染で通院中の患者でのGenotypeA症例の検討は十分になされていない.【目的】当院通院中のHBV慢性感染患者のうち,GenotypeAである患者を拾い上げ検討を行う.【方法】当院通院中のHBV慢性感染患者のGenotypeを測定し,各種パラメータや病歴と合わせて検討を行った.【結果】HBV慢性感染患者413例のうち,Genotypeの測定がなされた222例で検討した.Genotype A/B/C/Dは21/22/177/2例であり,GenotypeAは9.5%を占めていた.男性13例/女性8例.初診年齢は中央値42歳(18-55).家族歴は有/無/不明=5/5/11(4例は母あるいは子,2例は両親とも).B型肝炎の診断は1980年代/1990年代/2000年代/2010年代/不明=7/5/4/0/5例であった.肝硬変は4例,肝細胞癌の合併は1例であった.初診時データはHBe抗原(+)/(±)/(-)=1/2/18,HBVDNA中央値4.2logcopy/ml(<2.1-8.1),Alb 4.2g/dl(2.6-4.6),ALT 27IU/l(11-345),Plt 17.9万/μl(5.6-26.6),PT% 93.5%(33.7-163.6),AFP 4.1ng/ml(1.6-195)であった.IFN治療を1例に,核酸アナログを4例に投与している.19例は生存し2例は肝不全にて死亡した(2例ともアルコール依存患者).GenotypeC症例との比較においてGenotypeA症例は有意に初診時年齢が若く,肝細胞癌の合併が少なく,HBe抗原陰性で,HBVDNAは低値であった.【考察】当院におけるGenotypeAのHBV慢性感染患者の傾向は,2000年以前からHBVを診断されており,初診時年齢は若く,母子感染症例もあり,非活動性(HBe抗原陰性,低ウィルス,ALT正常)の非肝硬変症例で,非活動性がゆえに抗ウィルス療法は行われていない.また発癌率は低いようである.近年注目される前からGenotypeAの慢性感染患者が存在していた可能性がある.
索引用語