抄録 |
【目的】当院におけるHBVジェノタイプの変遷,臨床像,核酸アナログ治療応答性を検討した.【方法】2001年以降ジェノタイプを測定したHBV感染者1089例について,ジェノタイプ分布の年時変化,臨床像,遺伝子変異,発癌との関連性,核酸アナログ治療効果との関連を検討した.【結果】急性肝炎におけるジェノタイプAの頻度は,2001年-2003年で50.0%,2004年-2006年は46.2%,2007年以降は47.1%であった.慢性感染者におけるジェノタイプA,B,Cの分布は,2001年-2003年は3.1%,20.8%,76.0%,2004年-2006年は2.8%,24.6%,72.3%,2007年以降は2.2%,26.3%,71.1%であり,2001年から一定頻度でジェノタイプA慢性感染者が存在した.病型別の分布は,HBe抗原陰性の非活動性キャリアではジェノタイプBの頻度が高く(A 6%,B 53%,C 41%),慢性肝炎ではジェノタイプCが多く(A 2%,B 17%,C 80%),5年以上自然経過を観察した203例からの5年発癌率は,ジェノタイプA 0%,B 3.8%,C 9.0%であった.Core Promoter変異はジェノタイプCで高頻度(A 47%,B 15%,C 75%),Pre Core変異はジェノタイプBで高頻度(A 0%,B 68%,C 36%)と変異パターンに相違を認めた.核酸アナログ治療を行った416例の検討では,HBs抗原量100 I/ml未満への低下率はジェノタイプCは他と比較し低率であった(A 33.3%,B 13.3%,C 3.8%,p=0.05).【結論】ジェノタイプAは,2001年以降の急性肝炎の50%および慢性感染者の3%を占めたが,自然経過例からの発癌はなかった.ジェノタイプBは高齢で,HBe抗原陰性の非活動性キャリアが多くCore Promoter変異の頻度が少なく,ジェノタイプCと比較し発癌率が低い傾向を認めた.ジェノタイプCでは核酸アナログ治療によるHBs抗原減少が得られにくい傾向を認めたことより,ジェノタイプの違いはB型肝炎の病態に深く関与する可能性が示された. |