セッション情報 |
ワークショップ2
HBVジェノタイプとB型肝炎の病態
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タイトル |
W2-14:HBVジェノタイプB型高浸淫地域における,ジェノタイプの感染実態の変遷および臨床経過との関連
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演者 |
渡辺 久剛(山形大学消化器内科学) |
共同演者 |
斎藤 貴史(山形大学消化器内科学), 上野 義之(山形大学消化器内科学) |
抄録 |
【目的】当地域はキャリアの過半数がジェノタイプB型感染であり,都市部以外の感染実態を把握することはユニバーサルワクチン導入の観点からも重要と思われる.そこで今回,過去20年のジェノタイプの感染実態の変遷と,とくに急性肝炎例におけるジェノタイプと臨床経過との関連につき検討した.【方法】1990年から2009年まで診療したHBs抗原陽性のHBVキャリア468例を対象とし,(1)1990-1999年,2000-2009年の二群に分けてジェノタイプを比較した.(2)B型急性肝炎例34例についても同様の検討を行い,ジェノタイプA型感染例については,HBV関連マーカーを中心にその臨床経過について非A型感染例と比較した.【成績】(1)キャリアにおいては1999年以前と2000年以降のいずれにおいても,B型が約50%,C型が約35%であり,キャリア全体におけるジェノタイプの感染実態に変化はなかった.(2)B型急性肝炎34例におけるジェノタイプは,1999年以前と2000年以降ではA型の割合が2/17(12%)から5/17(29%)と増加傾向であり,このうち2例は夫婦間感染が疑われた.一方B型の割合は10/17(59%)から1/17(6%)と減少していた.A型7例中1例はHBs抗原が消失せず,最終的に慢性化した.HBs抗原消失時期を比較すると,ジェノタイプA型感染例では有意に遅く(49週vs. 8週;p<0.05),HBV DNA陰性化時期も非A型感染例に比し有意に遅かった(45週vs. 4.9週;p<0.05).一方,HBe抗原陰性化時期,HBe抗体出現時期,IgM-HBc抗体陰性化時期やALT値正常化時期は差がなかった.【結論】ジェノタイプB型高浸淫地域における検討では,HBVキャリア全体のジェノタイプの感染割合は過去と現在で大きな変化は見られなかった.B型急性肝炎例ではジェノタイプA型感染が増加しており,ジェノタイプと臨床経過との関連が示唆されたことから,治療介入のタイミングを議論する上でも,全国の感染実態の把握と症例の蓄積が急務である. |
索引用語 |
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