セッション情報 ワークショップ2

HBVジェノタイプとB型肝炎の病態

タイトル W2-17:

核酸アナログ中止後の肝炎再燃に対するHBV genotypeの関与

演者 松本 晶博(信州大学医学部消化器内科)
共同演者 吉澤 要(国立病院機構信州上田医療センター消化器科), 田中 榮司(信州大学医学部消化器内科)
抄録 【目的】B型慢性肝炎の核酸アナログ(NA)治療中止後の肝炎再燃については,中止時のHBsAgとHBcrAg量から効率的な予測が可能であることが報告されている.今回,中止後の肝炎再燃に対するgenotypeの関与を検討した.【方法】対象は全国20施設にて経験したNA薬中止例126例(男性83例,中止時の年齢中央値46歳)で,genotypeはA 1,B 5,C 101,F 1,ND 18であった.使用NA薬はLAM単独118例,ADV単独1例,ETV単独6例,LMV+ADV併用1例であった.NA中止後ALTが80 IU/L以上またはHBV DNA量が5.8 log copies/ml以上となった場合を肝炎再燃と定義した.NA薬中止後の肝炎再燃リスク予測は既報に従い,中止時のHBsAg量(cut off値:1.9 & 2.9 logIU/ml)とHBcrAg量(cut off値:3.0 & 4.0 logU/ml)から低,中,高リスクの3群に分けて解析した.【結果】Genotype Aの1例は中リスク群に属し,NA中止後5年の時点で再燃は見られなかった.Genotype B(n=5)の低,中,高リスク群の比率は2:2:1例,genotype C(n=101)の比率は4:31:65例であり,分布に有意差を認めた(p=0.021).genotype BおよびCの背景因子の比較では,中止時年齢,性別,治療期間,治療開始と中止時のALT,HBsAg量,HBV DNA量には差が見られなかったが,HBcrAg量がgenotype Bに比べCで高い傾向にあった(2.4 vs.4.4 logU/ml,p=0.070).次にリスク群別に比較を行った.低リスク群では両genotypeともNA中止5年目まで再燃はなかった.中リスク群と高リスク群では,genotype Cでは中止後10ヶ月以内に再燃例が多かったが(35/44例,80%),genotype Bでは,全3例で中止後10ヶ月以内の再燃はなく,その後に再燃していた(p=0.014).【考察】genotype BはCに比べ低リスク群になりやすい可能性が示唆された.しかし,中および高リスク群と判定される症例では,中止後の肝炎再燃はgenotypeによらず,予測リスクに従うと考えられた.今後,多数例での検討が必要である.
索引用語