セッション情報 ワークショップ3

B型肝炎ウイルスの再活性化の現状と対策

タイトル W3-1:

わが国におけるHBV再活性化の現状:厚労省研究班のガイドライン発表後の動向

演者 中尾 将光(埼玉医科大学病院消化器内科・肝臓内科)
共同演者 中山 伸朗(埼玉医科大学病院消化器内科・肝臓内科), 持田 智(埼玉医科大学病院消化器内科・肝臓内科)
抄録 【目的】厚労省研究班による劇症肝炎の全国調査には,2009年までにHBV既往感染の再活性化例が17例登録され,その全例が死亡していた.一方,同研究班は2009年にその予防ガイドラインを発表している.2010年以降の症例の動向と,再活性化に関する前向き検討の成績を基に,同ガイドラインの影響を評価した.【方法と成績】消化器病学会,肝臓学会の評議員が所属する552診療科および救急医学会の会員施設である463診療科を対象にアンケート調査を実施し,2010年に発症した急性肝不全211例とLOHF 9例が登録された.B型症例は64例(29%)であり,うち19例がキャリア例で,これらには既往感染からの再活性化例が9例含まれていた.既往感染の再活性化症例には非昏睡型は見られず,全例が内科的治療で死亡した.うち6例は悪性リンパ腫でリツキシマブを含む治療が実施されていたが,多発性骨髄腫,乳癌合併関節リウマチ,肥厚性硬膜炎で免疫抑制療法を実施している症例も認められた.また,HBs抗原陽性のキャリア発症である16例のうち7例でも誘引となる薬物が認められ,1例はリツキシマブ,他の6例は生物学的製剤を含む免疫抑制薬であった.リツキシマブ以外の免疫抑制・化学療法によるHBV再活性化の前向き検討には,既往感染289例が登録され,うち133例はリウマチ疾患などで免疫抑制療法が実施されていた.全体では6例(2.1%)で治療開始前からHBV-DNAが検出され,12例(4.2%)で再活性化が見られた.免疫抑制療法実施例では経過観察期間が1年未満の症例が多いにも拘らず,再活性化例は7例(5.2%)であり,化学療法実施例に比してその頻度は高率であった.【考察と結語】ガイドライン発表後1年が経過した2010年でも,これを遵守せずに免疫抑制・化学療法を実施して致死的経過を辿った症例が多数認められた.特にリウマチ領域では治療が長期に亘り,また再活性化の頻度も高率であることから,啓発活動を継続するとともに,これに適合したガイドラインを再構築する必要があると考えられた.
索引用語