セッション情報 ワークショップ3

B型肝炎ウイルスの再活性化の現状と対策

タイトル W3-6:

HBV-DNAモニタリングによる,リツキシマブ+ステロイド併用悪性リンパ腫治療中のB型肝炎ウイルス再活性化への対策に関する多施設共同前方視的観察研究:中間解析結果

演者 楠本 茂(名古屋市立大学大学院腫瘍・免疫内科学)
共同演者 田中 靖人(名古屋市立大学大学院病態医科学(ウイルス学)), 溝上 雅史((独)国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター)
抄録 【目的】B型肝炎ウイルス(HBV)既往感染歴のある,リツキシマブ(R)+ステロイド併用化学療法中の悪性リンパ腫症例のHBV再活性化の頻度およびHBV-DNAモニタリングによるpreemptive antiviral therapyの有用性を検証する.
【方法】対象は,未治療B細胞性リンパ腫のうち,R+ステロイド併用化学療法を施行するHBV既往感染例(HBs抗原陰性例のうち,HBc抗体陽性and/or HBs抗体陽性).登録後1.5年間,月1回のHBV-DNA定量検査を前方視的にモニタリングし,HBV再活性化(HBV-DNA≧1.8 Logコピー/mL)を確認した時点で抗ウイルス薬開始を強く推奨.主要評価項目はHBV再活性化割合,附随研究として保存検体を用いたウイルス学的解析を行う.プロトコール規定された200例に対する中間解析を行い,2011年6月30日までに収集されたデータを用いた.
【成績】2008年8月~2010年9月までに,45施設より200例が登録.うち解析対象となった187例の年齢中央値は63歳,男性50.8%.観察期間中央値549日で,187例中16例のHBV再活性化を認め,1年HBV再活性化割合は7.7%(95%信頼区間,4.7-12.7).登録後HBV再活性化確認までの中央値は158日(33-490).抗ウイルス薬開始時のHBV-DNAは1.8~3.1 Logコピー/mLで,HBV再活性化関連肝障害は認めなかった.多変量解析の結果,ベースラインのHBs抗体力価が10mIU/mL未満であることがHBV再活性化のリスク因子であった(調整ハザード比5.3;95%信頼区間,1.3-21.8;p=0.02).
【結語】月1回のHBV-DNAモニタリングによるpreemptive antiviral therapyは有用であった.なお,本研究は厚生労働科学研究費補助金による肝炎等克服緊急対策研究事業(H20-肝炎-若手-014,H23-肝炎-若手-008,H24-肝炎-一般-004)の一環として行われている.
索引用語