セッション情報 ワークショップ3

B型肝炎ウイルスの再活性化の現状と対策

タイトル W3-7[追加]:

造血器悪性腫瘍への化学療法におけるHBV再活性化の前向き検討

演者 松居 剛志(手稲渓仁会病院消化器病センター)
共同演者 姜 貞憲(手稲渓仁会病院消化器病センター), 田中 靖人(名古屋市立大学大学院医学研究科病態医科学)
抄録 【背景と目的】2009年に厚労省より『免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン』が示されたものの,詳細に関しては不明な点が多い.我々は2007年より2010年までprospective study実施してきたが,本study終了後もprospective cohortを継続している.【対象】2007年1月から2012年8月までに,当院血液内科で悪性リンパ腫または多発性骨髄腫と診断され,化学療法を開始したHBsAg陰性の152例中,HBc抗体and/or HBs抗体陽性の83例.【方法】化学療法前にHBs抗体,HBc抗体を測定し,化学療法施行中および施行後にはHBV DNAと肝機能を毎月測定した.HBV DNAが検出可能となった段階でHBV再活性化と定義した.【結果】83例中75例が悪性リンパ腫,8例が多発性骨髄腫であった.これらのうち30例(36.1%)がHBc抗体のみ陽性,4例(4.8%)がHBs抗体のみ陽性,49例(59.0%)が両抗体ともに陽性であった.平均観察期間は13.4か月で,HBV再活性化は化学療法中に5例認められた(6%).5例中,4例はHBc抗体のみ陽性で,1例は両抗体ともに陽性であった.また,両抗体陰性例からの再活性化は認められなかった(0/69).再活性化症例は非再活性化症例に比し,化学療法施行前のリンパ球が低い傾向にあり(995.9±473.9 vs 1571.5±1273.9;p=0.0532),化学療法中のリンパ球数は有意に低値であった(98.4±106.3 vs 336.0±346.2;p=0.0027).再活性化5例の基礎疾患は悪性リンパ腫であり,リツキシマブとステロイド療法が行われていた.HBV再活性化後,5例中2例にETVの投与を行い,残る3例ではHBV DNAの一時的な上昇を認めたものの,その後HBV DNAの減衰を認め無治療で経過観察されている.なお,HBV再活性化による肝炎をきたした例は無かった.【結語】悪性リンパ腫と多発性骨髄腫のHBV既往感染例における化学療法中に,HBV再活性化は6%認めたが,全例肝炎の発症は見られていない.HBc抗体,HBs抗体の両抗体陰性例ではHBV再活性化は認められなかった.
索引用語