セッション情報 ワークショップ3

B型肝炎ウイルスの再活性化の現状と対策

タイトル W3-10:

血液悪性疾患におけるHBV再活性化の時期とその問題点

演者 詫間 義隆(倉敷中央病院消化器内科)
共同演者 守本 洋一(倉敷中央病院消化器内科), 高畠 弘行(倉敷中央病院消化器内科)
抄録 【目的】血液悪性疾患に対する抗体療法,化学療法,移植などの普及に伴いHBV再活性化が問題視されている.今回我々はHBV再活性化の時期とその問題点について検討した.【方法】2005年1月から2011年9月まで当院で経験したde novo B型肝炎は8例で全例が悪性リンパ腫(ML)と造血幹細胞移植例(SCT)からの発症で再活性化の実態を調べるため詳細を検討した.【成績】(1)ML1021例(803例rituximab[R]使用)を対象とした.HBs抗原陽性19例(1.9%)のうち4例(21%,全例R使用)が再活性化しそのうち1例はR-CHOP8クール終了120日目まで核酸アナログ(NA)を予防投与していたが投与終了後55日後劇症肝炎を発症し死亡した.(2)HBsAg陰性1002例のうちHBcAbとHBsAbが測定された704例中158例(22.4%)にHBV既往感染(HBcAb陽性 and/or HBsAb陽性,さらに治療前HBV-DNA陰性)が認められた.うち19例(12.0%)が再活性化した.再活性化の時期は化学療法後6ヶ月未満が15例,6ヶ月以上12ヶ月未満が3例,12ヶ月以上(20.6ヶ月後)1例認めた.19例中3例(1.9%,全例R使用)に肝炎を発症し1例が劇症化し死亡した.再活性化例19例中11例が現在当院で経過観察中であるが7例NA中止しているが現在再活性化は認めていない.(3)SCTでHBs抗原陰性151例中42例(26.8%)にHBV既往感染が認められ7例(16.7%)に再活性化を認め,5例(13.9%)に肝炎が発生したがNAで全例沈静化した.再活性化の時期はSCT後6ヶ月未満が1例,6ヶ月以上12ヶ月未満が1例,12ヶ月以上(12.1から33.5ヶ月後)5例認めた.いずれも移植後の化学療法あるいはGVHDによる免疫抑制剤投与中であった.残る1例はSCT直後に再活性化し免疫抑制剤終了12ヶ月後までNAを投与し中止した.しかしNA中止後6か月目に再々活性化しNA再開した.SCT後再活性化した7例中5例は現在当院で経過観察中であるが全例NA投与中である.【結語】SCT症例でB型肝炎既往感染例は移植後1年以上経過して再活性化を認め,さらにNA中止後再々活性化例も認めるため長期のHBV-DNAモニタリングが必要と同時にNA離脱も困難である.
索引用語