セッション情報 ワークショップ3

B型肝炎ウイルスの再活性化の現状と対策

タイトル W3-12:

免疫抑制・化学療法を受けたHBV既往感染者における再活性化の検討

演者 仁科 惣治(川崎医科大学肝胆膵内科学)
共同演者 原 裕一(川崎医科大学肝胆膵内科学), 日野 啓輔(川崎医科大学肝胆膵内科学)
抄録 【目的】近年,血液疾患・悪性腫瘍・自己免疫疾患等の様々な領域において多様な免疫抑制作用を有する薬剤が投与されており,そのためHBV既往感染者に対する再活性化リスクが注目されるようになった.そこで当院において免疫抑制・化学療法を受けた既往感染者の再活性化について検討した.【対象と方法】2008年1月~2012年2月に免疫抑制・化学療法を受けた既往感染者138例の再活性化率ならびに再活性化関連因子等を検討した.【結果】HBV再活性化率は10.1%(14/138)であり,主要な治療法別再活性化率(重複含む)は,リツキシマブ23.3%(7/31),PSL 14%(14/100),MTX 3.1%(2/65),生物学的製剤0%(0/13)であった.HBc抗体陽性者は97.8%(132/135)とほぼ全例であり,HBc抗体の有無での検討は今回除外した.多変量解析では初診時HBc抗体陽性/HBs抗体陰性(v.s HBc抗体陽性/HBs抗体陽性,odds ratio:4.703,95%CI:1.290-17.150,P<0.05)が再活性化関連因子であった.再活性化を認めた14例は全例核酸アナログ製剤(NA)が投与されたが,そのうち8例は厚生労働省研究班ガイドラインに準じたNA投与開始が可能であった.うち1例は免疫抑制剤終了1年後のHBV-DNA陰性さらにはHBs抗原陰性も確認したためNAを中止したが,HBV-DNAは再陽性化した.一方,肝炎発症後に再活性化を指摘された6例のうち1例は亜急性劇症肝炎で死亡した.【結論】今回の検討において,従来指摘されているHBc抗体陽性に加えHBs抗体陰性である症例への免疫抑制療法では特に再活性化に注意が必要と考えられた.また,厚生労働省研究班ガイドラインの順守は重篤な肝炎発症予防に重要と考えられた.さらに,NA中止についても今回の検討ではHBs抗原陰性症例でもHBV DNA再陽性化したことから,厚生労働省研究班のガイドラインに準じたHBs抗原量のみならずHBc関連抗原量も考慮する必要があるのではないかと考えられた.
索引用語