セッション情報 ワークショップ4

急性肝不全の現状と治療法の進歩

タイトル W4-2:

急性肝不全の実態と治療成績の検討

演者 姜 貞憲(手稲渓仁会病院消化器病センター)
共同演者 松居 剛志(手稲渓仁会病院消化器病センター), 横山 健(手稲渓仁会病院ICU)
抄録 【目的】2011年に急性肝不全(ALF)の診断基準が策定された.急性肝障害に対しALF診断基準を用い成因別に肝性昏睡有無を検討し,自験例に対する肝移植ガイドライン(GL)の検証を試みた.【方法】1997年4月から2012年8月まで当センターで診療した,PT活性40%以下又はINR 1.5以上のALF症例を対象とした.1)成因と昏睡合併頻度,2)治療成績,3)肝移植GLを適用し検討した.【成績】1)過去15年間に診療したALFは,102例(男50女52例,年齢中央値48[16-86]歳)で,PT活性(中央値,以下同様)23.2%,INR 2.83であった.成因別にはvirus性48,循環不全12,AIH 9,薬物性7,代謝性4,悪性腫瘍肝浸潤2,成因不明20例で,virus性ではHBV 26,HEV 15,HAV 5,他2例であった.昏睡合併型は53例(52%)で,成因はvirus性25(47.2%),AIH 6(11.3%),薬物5(9.4%),代謝性4(7.5%),悪性腫瘍2(3.8%),循環障害1(1.9%),不明11(20.7%)例であった.2)昏睡非合併49例中46例(93.9%)が生存し,虚血性心疾患,敗血症性ショック,感染で各1例死亡した.昏睡合併53例では29(含む肝移植8)例が生存した.HDF主体の血液浄化療法導入後の昏睡合併45例のうち,悪性腫瘍肝浸潤2,再活性化4例は全例死亡した.これらを除く39例では,20例を内科的集中治療で救命し,肝移植施行9例中6例が生存した(72.2%).3)上記39例中肝移植GLが適用可能な37例のscoreは中央値5(1-7)点で,死亡率はscore1-2,3,4,5,6,7で各々25.0,57.1,20.0,33.3,45.5,70.0%であった.【結語】ALF102例では昏睡有無に関わらずvirus性が主要な成因だが,成因不明も2割存在する.AIHは昏睡合併例の10%超であるが,AIH非定型例が成因不明に含まれる可能性もあり臨床的課題である.限定的な症例数によるが,肝移植GLはscore 4点以上では死亡率が漸次増加し,肝移植適応検討に役立つ可能性が示唆された.
索引用語