セッション情報 ワークショップ4

急性肝不全の現状と治療法の進歩

タイトル W4-3:

急性肝障害の劇症化予防に対するN-アセチルシステインの効果

演者 宮本 康弘(岩手医科大学内科学講座消化器・肝臓内科分野)
共同演者 滝川 康裕(岩手医科大学内科学講座消化器・肝臓内科分野), 鈴木 一幸(岩手医科大学内科学講座消化器・肝臓内科分野)
抄録 【目的】当院では肝炎劇症化の予知・予防の観点から,2004年以降,北東北の約40病院と共同でPT80%以下の急性肝障害患者の共同管理と劇症化予知式の検証を行い,成因と予後に関する検討を行っている.このシステムを利用し,昏睡発現率からN-アセチルシステイン(NAC)投与が劇症化予防に寄与するかを検討した.【対象・方法】2004年8月から2012年3月までに当院のシステムに登録された急性肝障害481症例のうちPT80%以下の急性肝不全362例についてエンドポイントを昏睡発現として,各種治療における昏睡発現率を比較検討した.【結果】当科の劇症化予知式で搬送基準にあたる予測劇症化確率20%以上の症例が36%で,そのうち特殊治療開始基準である50%以上の症例が12%だった.予測劇症化確率20-50%の症例80例のうち21例で加療開始日よりNACを投与し,非投与例と比較した.投与スケジュールはアセトアミノフェン中毒治療と同量とし,初回に140mg/kg,以後4時間毎に70mg/kgを17回,合計18回を内服投与した.併用を妨げない因子として抗凝固療法(AT-3,FOYなど),ステロイド(パルス→プレドニン)とした.各種治療における昏睡発現率を施行例,非施行例で比較したところ(施行例/非施行例),NAC(10.5%/29.5%),ステロイドパルス(34.8%/23.8%),プレドニン(25.0%/31.8%),アルブミン(29.8%/13.0%),ラクツロース(47.4%/4.8%),FOY(56.5%/21.1%),フサン(66.7%/21.6%),AT-3(32.1/8.3%),ウリナスタチン(33.3%/23.1%),SNMC(29.2/18.3%)であった.重症な症例ほど多種の治療を施行する傾向であったが,NAC,プレドニンの施行例において昏睡発現率の低下傾向を認めた.【結語】急性肝障害における劇症化予防に対する治療としてNACが有効な可能性が示唆された.
索引用語