セッション情報 ワークショップ4

急性肝不全の現状と治療法の進歩

タイトル W4-4:

劇症肝炎に対する内科的治療法の変遷と有効性に関する検討

演者 森内 昭博(鹿児島大学消化器内科)
共同演者 桶谷 眞(鹿児島大学消化器内科), 井戸 章雄(鹿児島大学消化器内科)
抄録 【目的】劇症肝炎は予後不良の疾患で種々の内科的治療が実施されているが,未だ肝移植以外に救命率を改善することが証明された治療法は確立されていない.一方,血液浄化療法では一部の施設でon-line HDF(血液濾過透析)が導入され肝性脳症からの高い覚醒率が報告されている.今回我々は1998年以降の内科的治療法の変遷とその実施率,有効性について検討した.【方法】厚生労働科学研究費補助金難治性肝疾患克服研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」における劇症肝炎および遅発性肝不全の全国集計(1998~2003年:埼玉医科大学,2004~2009年:鹿児島大学)に登録された1094例(劇症肝炎急性型543例,劇症肝炎亜急性型551例)を対象に治療法の実施率とその変遷について検討した.また血液浄化療法についてはその方法と脳症からの覚醒率および救命率を検討した.【結果】1998~2003年および2004~2009年における各種治療法の実施率は,血漿交換91.8%と90.9%,血液濾過透析76.2%と75.0%,ステロイド68.2%と72.4%,抗凝固療法58.7%と47.2%,核酸アナログ製剤25.6%と39.0%,肝移植20.5%と23.5%で,B型劇症肝炎に対する核酸アナログ製剤と肝移植は近年の実施率が増加していた.B型劇症肝炎に対しては,2001年以降,78.6~94.6%で核酸アナログ製剤が投与されていたが,救命率の改善はみられなかった.また高率に実施されていた血液浄化療法も救命率を改善しなかった.一方,血液浄化療法は,持続血液濾過透析が51.1%と最も多く実施されており,high-flow CHDFおよびon-line HDFはそれぞれ11.3%,1.7%に実施されているにすぎなかったが,63.6%,83.3%と高い覚醒率が得られていた.【結論】on-line HDFなど血液浄化療法の進歩によって肝性脳症からの覚醒率は向上したが,肝再生が得られずに救命率の改善はみられていない.今後,血液浄化療法と併用される新たな肝再生促進療法の開発が急務である.
索引用語