セッション情報 ワークショップ4

急性肝不全の現状と治療法の進歩

タイトル W4-5:

急性肝不全に対する人工肝補助療法の現状

演者 藤原 慶一(千葉大学消化器・腎臓内科学)
共同演者 横須賀 收(千葉大学消化器・腎臓内科学)
抄録 【目的】劇症肝炎の症例数は減少しているが,内科的救命率には改善が認められない.内科的救命率の改善には覚醒率の向上が大前提である.厚労省「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班 劇症肝炎分科会 血液浄化法の有効性評価を目的としたワーキンググループでは,急性肝不全に対する人工肝補助療法の現状を調査し,将来的には有効性を検証し標準療法を確立することを目的としている.今回は現状に関する全国調査を行なった.【方法】2004年1月~2011年12月の8年間に経験した急性肝不全例について,症例数・人工肝補助療法の現状に関するアンケート調査を行なった.【結果】126施設で症例があり,劇症肝炎急性型512例,亜急性型482例,遅発性肝不全62例,その他の急性肝不全383例,の計1439例の回答があった.人工肝補助施行例の覚醒率と非移植生存率はそれぞれ,急性型で51%,47%,亜急性型で48%,27%,遅発性肝不全で60%,12%,その他の急性肝不全で69%,69%であった.その他の急性肝不全では非施行例が63%を占めた.125施設より回答を得た人工肝補助の方法としては,80%以上の施設で血漿交換(PE)と何らかの血液ろ過透析(HDF)の併用が行われ標準療法となっていた.HDFについては,CHDF・HDFが多く,high flow CHDF(17施設)・on-line HDF(8施設)のどちらかが施行されていたのは23施設にとどまっていたが,技術的にそれらが可能な施設は3倍近くあり,今後の強化が期待された.【結論】On-line HDFでは,大量の置換液を用いることで単位時間当たり最高効率のHDFが可能であり,肝性脳症の原因とされる中分子量物質の除去効率が極めて高く,従来のHDFよりも高い覚醒能を有する.さらに前希釈法を用いることで回路凝固が起こりにくくなるため回路交換の頻度も少なくなり簡潔・安全となる.また,透析液から置換液を作成することで大幅にコストが抑えられるが,水質の清浄化管理が必要となる.前希釈on-line HDFは人工肝補助療法の第一選択と成り得ると思われる.
索引用語