セッション情報 ワークショップ4

急性肝不全の現状と治療法の進歩

タイトル W4-7:

移植実施施設からみた急性肝不全に対する移植適応判断

演者 山敷 宣代(東京大学臓器移植医療部)
共同演者 菅原 寧彦(東京大学肝胆膵人工臓器移植外科), 國土 典宏(東京大学肝胆膵人工臓器移植外科)
抄録 【目的】急性肝不全(ALF)に対する肝移植の成績は5年生存率70%以上と良好であるが,発症後数日以内に手術適応判断を要するため発症早期からの移植施設との連携が重要である.移植実施施設の立場からその問題点について検討する.【方法】2006年から2011年までに急性肝不全に対する肝移植適応を検討した59例(年齢45(15~65)歳,男性32例)中,転帰不明の移植断念例7例を除いた52例の臨床経過を検討した.【結果】52例の成因はB型肝炎20例,AIH(疑い例含む)7例,薬物性4例,成因不明18例,その他3例.転帰は移植21例(生体16例,脳死5例),死亡24例,改善7例.移植後死亡は3例.グラフトおよび患者生存率は1年81%,90%,3年75%,84%.紹介時年齢は移植例で中央値39(IQR:30-47)歳,死亡例で50(34-56)歳,改善例で46(40-53)歳と死亡例で高齢の傾向があった.新劇症肝炎ガイドラインのスコアは移植例6(5-7),死亡例5(4-7),改善例4(2-6)であった.脳症発現から紹介までの日数は移植1(1-4)日,死亡3(2-5)日,改善0.5(0-5)日で差は無かった.しかし死亡例の50%(12例)は紹介の時点で移植適応なく死亡しており,これらの紹介時期は中央値4(IQR:2-17)日と遅れる傾向にあった.適応外理由は感染症5例,肝性脳症の進行4例,脳出血2例,薬物依存症1例であった.残る12例は生体ドナー候補者なく脳死肝移植待機の方針となったが評価中および待機中に死亡した.脳死登録症例はドナー発生まで原則紹介元での治療をお願いした.治療内容,感染症のモニタリング,鎮静剤の使用の方針等が症例毎に異なる中,電話,Faxにて日々の病状把握に努めた.【結論】ALFに対する肝移植の成績をさらに良好にするためには,発症早期からの連携と移植待機中の内科―外科間で情報の共有,治療方針とモニタリングの明確化が重要と考えられた.
索引用語