セッション情報 ワークショップ4

急性肝不全の現状と治療法の進歩

タイトル W4-9:

急性肝不全治療における脳死肝移植の位置付け

演者 安中 哲也(岡山大学消化器肝臓内科学)
共同演者 高木 章乃夫(岡山大学消化器肝臓内科学), 八木 孝仁(岡山大学肝・胆・膵外科学)
抄録 【目的】脳死移植法改正に伴い脳死肝移植は現実的な選択肢となりつつある.しかし依然,脳死肝移植登録数と比し脳死臓器提供は少ない.急性肝不全では待機期間中のBridgingとして人工肝補助が欠かせないことから,患者および医療者,医療施設の負担は大きい.当院での現状を分析し問題点を検討する.【方法】2010年7月の改正臓器移植法施行から2012年9月の間に当院へ紹介された急性肝不全症例12例を対象とした.【結果】転帰は脳死移植4例(待機期間中間値11日),生体移植1例(同22日),死亡3例(同25日),回復2例,適応外2例であった.症例1(脳死移植)は33歳男性,B型亜急性型劇症肝炎.2010年に緊急度9点で登録.2日目に2位,4日目に1位,10日目に1位のドナー情報があった.1度目の1位は脂肪肝であり移植に至らなかったが,2度目の1位で脳死肝移植が成立した.症例2(死亡)は44歳男性,原因不明の亜急性型劇症肝炎.2011年に緊急度9点で登録.25日間の待機期間に紹介元医療施設で計20回の血漿交換を実施したが,その間にドナー情報は無かった.精神的に追い詰められたご本人,ご家族より登録取り下げの依頼があり,血漿交換も中止,その後永眠された.症例3(適応外)は38歳女性,バセドウ病の診断で近医加療を受けていたが,自己判断で通院中断.2011年に意識消失をきたし前医を救急受診.甲状腺クリーゼによる急性肝不全と診断,血漿交換やヨードによる治療を行った.肝移植も考慮されたが甲状腺クリーゼのコントロールがつかず,永眠された.【結論】劇症肝炎には脳死移植登録の際に最高点(旧基準9点,現基準10点)を与えられる.移植への期待が大きいものの,ドナーが現れない場合には長期にわたる待機期間を強いられる.甲状腺クリーゼなどの他疾患に起因する急性肝不全は,肝移植対象としては慎重に適応を判断する必要がある.
索引用語