セッション情報 ワークショップ4

急性肝不全の現状と治療法の進歩

タイトル W4-10:

High mobility group box-1に着目した急性肝不全治療の基礎的検討

演者 篠田 昌宏(慶應義塾大学一般・消化器外科)
共同演者 田邉 稔(慶應義塾大学一般・消化器外科), 北川 雄光(慶應義塾大学一般・消化器外科)
抄録 【背景】敗血症など各種の病態で核内タンパクHigh-mobility group box 1(HMGB1)が新たな炎症性メディエーターとして注目されている.本研究では,急性肝不全患者における血清HMGB1動態を検討し,動物肝不全モデルにおけるHMGB1制御による予後改善効果の検討をした.【方法】1)劇症肝不全14例,急性肝炎重症型18例,慢性肝炎37例,非代償性肝硬変40例,健常者7例における血清中HMGB1(ng/mL)を測定した.また急性肝不全,健常者の肝のHMGB1免疫染色,肝組織中HMGB1定量を行った.2)薬剤誘導性ラット肝不全モデルに抗HMGB1抗体を投与し,血中HMGB1値,各種血中パラメータ(AST・ALT・IL-6・TNF-α),肝HE染色,生存率を検討した.3)HMGB1吸着カラム(東レ,非売品)のHMGB1吸着能をin vitroで検証した後,薬剤誘導性ブタ肝不全モデルに吸着カラムを用いた体外循環を4時間施行した.【結果】1)血清中HMGB1値は,劇症肝不全,急性肝炎重症型は他疾患,健常者に比べ有意に高値であった.急性肝不全患者においては,肝細胞核におけるHMGB1染色の著しい減弱,組織中HMGB1の低下を認めた.2)薬剤誘導性ラット肝不全モデルにおいて,抗HMGB1抗体投与は,血中HMGB1を有意に低下させ,各種血中パラメータ,肝HE所見,生存率を有意に改善した.3)吸着カラムは,in vitroで高度のHMGB1吸着能を示した.同カラムは,薬剤誘導性ブタ肝不全モデルの血中HMGB1値を有意に低下させ,吸着群は非吸着群に比し生存率の延長傾向を認めた.【結論】急性肝不全患者において血清HMGB1が上昇していた.動物モデルにおける検討でHMGB1は急性肝不全の病態に深く関わっており,HMGB1制御が病態を改善する可能性が示唆された.
索引用語