セッション情報 |
ワークショップ5
改正臓器移植法施行後の肝移植の現状と展望
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タイトル |
W5-4:当院における脳死肝移植施行症例,および脳死肝移植登録待機症例の検討
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演者 |
石上 雅敏(名古屋大学消化器内科学) |
共同演者 |
小倉 靖弘(名古屋大学医学部附属病院移植外科), 後藤 秀実(名古屋大学消化器内科学) |
抄録 |
【背景】2010年7月の改正臓器移植法運用開始以来,改正前の14年間でわずか67例の脳死下肝臓提供が,改正後の2年余りで98例と飛躍的な増加を遂げた.それに伴い,肝不全患者の治療法選択にも影響を与えていると考えられる.今回我々は当院での脳死肝移植施行症例,および登録待機症例につき検討を行い,具体的な事例を挙げながら治療法の変化,および現状における問題点について考察する.【患者および背景】2003年4月から2012年9月までに当院において施行された脳死肝移植症例13例,および2012年9月20日現在当院で脳死肝移植登録待機中の患者38例を検討対象とした.患者背景は,施行症例:年齢中央値:47歳(16-61歳),男性8例,女性5例,法改正前は5年5ヶ月で7例,法改正後は2年2ヶ月で6例であった.待機症例:年齢中央値:50.5歳(16-67歳),男性:25例,女性13例であった.【結果】施行症例の待機期間は劇症(10点相当)では法改正前で3日(1例),法改正後で中央値:20.5日(2例),6点症例は法改正前で中央値1037日(6例),改正後で997日(4例)と法改正の前後で現状では明確な差は出ていない.施行症例の1年,5年生存率は84.6%だった.待機症例は8点:中央値98日(1例),6点:635日(17例),3点:1409日(17例),1点:1415日(3例)だった.また当院において経験した,待機期間18日で脳死肝移植施行し,摘出肝重量330gだった1例の劇症肝炎患者の経過を示す.【結語】(1)当院においては法改正前後で施行症例数は増加しているものの,まだ待機期間の短縮にはつながっていない.(2)劇症肝炎症例では1ヶ月以内にはドナーが現れているものの,今回提示する症例にもある通り少なくとも1週間以内にドナーが現れる状態にならないと患者の安全性が担保できないのではないか.(3)現在予測予後半年以内,とされる6点症例でも法改正後も3年弱の待機期間を強いられている.(4)以上から推測すると少なくとも現状の3倍程度の臓器提供が安全な肝移植のためには必要と考えられる. |
索引用語 |
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