セッション情報 ワークショップ5

改正臓器移植法施行後の肝移植の現状と展望

タイトル W5-6:

改正臓器移植法施行後の肝移植の現状と今後の課題

演者 海道 利実(京都大学肝胆膵移植外科学)
共同演者 藤本 康弘(京都大学肝胆膵移植外科学), 上本 伸二(京都大学肝胆膵移植外科学)
抄録 【目的】改正臓器移植法施行後の肝移植の現状と今後の課題につき検討した.
【方法】対象は当科にて法改正以降2012年8月までの間に脳死肝移植を施行した17例.患者背景,緊急度,待機日数,生存率等につき検討した.連続変数は中央値で表示した.
【結果】1)脳死肝移植数(全国):法改正直後は増加したが,半期別に見ると徐々に減少し,2012年後半は再び増加.2)患者背景:成人(18歳以上)16例,小児1例.原疾患は,C型肝硬変4例,原発性硬化性胆管炎3例(うち2例が両親からの2度の生体肝移植後の再々移植),原発性胆汁性肝硬変3例,移植後グラフト不全3例(長期2例,短期1例),急性肝不全・代謝性肝疾患各2例.MELDスコアは27(13-44).3)緊急度・待機日数:9点または10点が7例,8点が3例,6点が7例.全症例の初回登録からの待機日数は903日(2-4567)であったが,8点以上の症例は当該点数後8.5日(2-75).4)生存率:全症例の1年生存率82%.6点と8点以上では,8点以上が高く,特に8点の3例は全例生存.5)グラフト:分割肝移植を積極的に考慮しており,9例が全肝移植,7例が分割肝移植,1例が減量肝移植.分割肝移植のGRWRは1.53(0.98-2.49)と当科の生体肝移植例より有意に大きかった.6)冷保存時間:573分(320-731)で,全例ほぼ12時間以内で移植可.ドナー発生地域別では,遠方(北海道,東北,四国,九州)とそれ以外では,各々651分,461分と遠方の方が有意に長かった(p=0.025).7)移植アルゴリズムの変化:脳死ドナーの増加に伴い,急性肝不全(→high flow HDFによる緊急生体肝移植の回避)と原発性硬化性胆管炎(→脳死優先)において変化あり.8)ドナーアクション:ポテンシャルドナーが多いと思われる脳外科病院を中心に,移植外科医・救急医・コーディネーターが出向いて啓蒙するシステムを構築中.
【結語】法改正後の脳死ドナー増加により高緊急度の患者にはある程度のbenefitがもたらされた.しかし,ドナーアクションによるさらなる脳死ドナーの増加や地域性の導入等が今後の課題である.
索引用語