抄録 |
【目的】劇症肝炎患者には脳死待機リストでは最も高いpriorityが与えられている.改正臓器移植法実施後のドナー数増加は,待機リスト上位にある劇症肝炎患者の転帰に変化をもたらしたと推測されることから,その現状を検討した.【方法】1997年10月から2011年8月末までに日本脳死肝移植適応評価委員会において評価を受け,臓器移植ネットワークにレシピエント候補として登録された18歳以上の劇症肝炎患者142例.適応評価委員会事務局データベースに記録された臨床情報と臓器移植ネットワークに登録された転帰を用いて,待機死亡率,脳死肝移植率および脳死肝移植施行に寄与する要因,最終転帰について解析した.【成績】18歳以上の全待機患者は1295例で,そのうち劇症肝炎患者は142例11%を占めた.転帰は脳死肝移植17例,生体肝移植14例,回復20例,待機死亡83例,病状悪化による申請取り下げ8例であった.登録後10日,20日,30日の累積待機死亡率はそれぞれ29.5%,45.2%,53.8%であり,待機生存期間の中央値は29日であった.脳死肝移植施行に関与する要因を検討したところ年齢,性別,血液型,肝障害の成因,待機時間,肝機能などの要因は関連が認められず,登録時期すなわち改正臓器移植法実施前か後かのみが有意な要因であった(Odds ratio 5,41,P=0.01).累積の脳死肝移植施行率を算出したところ,登録後10日目の移植施行率は改正法実施前の3.9%に対し実施後は25.5%と改善していた.改正法実施前の転帰は脳死肝移植施行,生体肝移植移行,自然回復,待機死亡の比率がそれぞれ7.8%,14.7%,17.2%,61.2%であったが,実施後は34.6%,0%,7.7%,57.7%となった.【結論】改正臓器移植法実施により劇症肝炎患者に対する脳死肝移植施行率は約5倍に上昇し,待機死亡の減少と共に生体ドナーを回避する効果も認められた.ただし,依然として待機死亡の割合は高く,更なるドナー活動の普及が予後改善には必要と考えられた. |