セッション情報 ワークショップ5

改正臓器移植法施行後の肝移植の現状と展望

タイトル W5-8:

脳死肝移植数増加に向けた対策に関する検討

演者 吉住 朋晴(九州大学消化器・総合外科)
共同演者 調 憲(九州大学消化器・総合外科), 前原 喜彦(九州大学消化器・総合外科)
抄録 【はじめに】改正臓器移植法施行後,脳死肝移植数は増加したが,未だに生体移植に頼らざるを得ない現状である.【目的】脳死移植数が増加しない原因を探り,更なる症例数増加に向けた対策を検討する.【対象】1)医学生73名,看護師54名,歯科医師25名,医師24名,事務職13名,その他13名.年齢20歳代―60歳代.男女比:33%:67%.2)2010年7月以降に我が国で脳死肝移植を施行された92例.【方法】1)臓器移植に関する講義・講演終了後にアンケートを施行.質問は,a)脳死下臓器摘出を許容するか,b)臓器提供意思表示の有無,c)家族に肝/腎移植が必要な場合,生体ドナーになるか,d)オプション提示をすすめるには.2)脳死肝移植施行時の待機順位と上位待機者辞退の理由について検討.【結果】1)a)摘出を許容73%,許容しない18%,わからない9%.許容しない理由は,家族なら受け入れられない26%,脳以外の臓器が生きている26%,体温がある15%などであった.b)意思表示あり38%,なし62%.c)生体ドナーになる72%,ならない7%,わからない21%.d)オプション提示をすすめるには,わからない29%,国民の啓発が必要14%,現状で提示を推進14%,医師・医療者の教育が必要10%,院内コーディネーター育成・配置9%,法的整備7%などであった.2)脳死肝移植施行時,待機リスト1位51例,2位21例,3位10例,4位以下10例であった.リスト上位者の辞退は109例で,辞退理由として,サイズミスマッチ43例(うち,36例は同じドナー),脂肪肝・HBc抗体陽性などドナー要因14例,(生体・死体)移植済み9例,血液型一致を希望8例,状態安定7例などであった.【まとめ】国民および医療従事者への啓発,オプション提示増加に向けた体制整備が,脳死下臓器提供増加には肝要であると考えられた.また,レシピエント側では,辞退理由の医学的妥当性を検証するシステム作り,分割肝移植の適応整備が必要と考えられた.
索引用語