セッション情報 ワークショップ6

未分化型早期胃癌の診断とESDの適応

タイトル W6-3:

未分化型胃癌における適応拡大条件と粘液組織学的検討―粘膜内重層構造と腫瘍腸型化による悪性度分類―

演者 岡村 卓磨(信州大学医学部附属病院消化器内科)
共同演者 岩谷 勇吾(信州大学医学部附属病院消化器内科), 長屋 匡信(信州大学医学部附属病院消化器内科)
抄録 【目的】未分化型早期胃癌に対する内視鏡治療適応拡大が検討されているが,これまで我々は粘膜内重層構造を有する未分化型胃癌が低悪性度腫瘍の性質を有する可能性を報告してきた.また,未分化型癌の腸型化は腫瘍の悪性度増悪と関連があるとされている.今回我々は,未分化型胃癌における内視鏡治療の適応拡大条件を検証することを目的とし,未分化型胃癌の粘膜内重層構造や腸型化の有無による臨床病理学的特徴の検討を行った.【方法】2003年1月から2012年7月までに外科的に切除された早期胃癌41例(sig単独20例,por/sig+por21例)を対象とした.MUC5AC,MUC6を用いた免疫染色にて層構造の有無,MUC2による腸型化の有無を検討し,臨床病理学的特徴を比較した.【結果】平均年齢60.7歳,男性17例(42%),病変長径平均値は25.4mm,深達度はM癌28例,SM癌13例であった.脈管侵襲陽性7例(17%)(ly:v=6:2)で,リンパ節転移は2例(5%)に認めた.重層構造は20例(49%)で認め,重層構造を認める症例では有意に深達度M病変,sig単独病変,脈管侵襲陰性病変が多かった.しかしリンパ節転移に関しては,陽性であった2例でいずれも重層構造の破綻を認めたものの,症例が少なく重層構造の有無による有意差を認めなかった.また,未分化型癌がMUC2陽性となる腸型化例は7例(17%)あり,脈管侵襲陽性例が有意に多く認められた.リンパ節転移を認めた症例は,1例はM病変のUl(+),por混在,もう一例はSM病変のpor混在,腸型化例であった.【考察】未分化型癌において粘膜内重層構造が保たれている症例では粘膜内病変,sig単独が多く,脈管侵襲も来たしにくい傾向にあった.逆に,腫瘍の腸型化を認める症例では脈管侵襲を来たしやすい傾向を認めた.内視鏡治療適応において重層構造の有無は適応拡大条件の,腫瘍の腸型化は適応外条件の一つとなる可能性が示唆されたが,リンパ節転移の有無に関しては有意差がなく,今後症例の追加検討が必要である.
索引用語