セッション情報 ワークショップ6

未分化型早期胃癌の診断とESDの適応

タイトル W6-10:

胃未分化型癌に対するESDの臨床病理学的検討

演者 森山 智彦(九州大学病態機能内科学)
共同演者 松本 主之(九州大学病態機能内科学)
抄録 【目的】胃未分化型腺癌に対する術前深達度診断の正診率,ESDの治療成績,短期予後を明らかにする.【方法】2003年から2011年9月までに当科及び関連17施設において術前に深達度を粘膜内と判断したうえでESDを施行し,詳細な病理学的評価が可能であった胃未分化型腺癌50病変と胃分化型腺癌1070病変を対象とし,術前深達度診断の正診率,ESDの治療成績,短期予後を比較検討した.【結果】未分化型群,分化型群それぞれの平均年齢は69.1歳と71.8歳で,男女比は26:24と809:261であった.切除標本で深達度SMと診断されたのは未分化型群11例,分化型群115例で,正診率はそれぞれ78.0%,89.3%と未分化型群で低率であった.平均腫瘍長径は16.8mmと15.9mmで両群に差はなかったが,治療時間の中央値は112分,89分と未分化型群でより時間を要していた.一括切除率は94.0%と97.5%で差はなかったが,水平断端が陽性もしくは判定不能とされる病変はそれぞれ20.0%,5.2%と未分化型群で高率であった.一方,垂直断端が陽性もしくは判定不能とされた病変はそれぞれ4.0%,2.7%と差を認めなかった.リンパ管侵襲はそれぞれ14.0%,2.2%と未分化型群で高率であったが,血管侵襲は2.0%と1.0%で差を認めなかった.出血や穿孔,誤嚥性肺炎といった合併症の発生率は16.0%,12.2%と2群間に差はなかった.未分化型群では22%に,分化型群では5%に追加の外科手術が施行されていた.フォロー期間中に分化型群の5例に局所再発を認めているが,両群ともこれまでにリンパ節再発や遠隔転移,原病死の症例は認めていない.【結論】胃未分化型癌に対するESDをすすめるうえでは術前深達度診断をより慎重に行う必要があり,切除標本でSM浸潤や脈管侵襲があれば速やかに追加外科治療を考慮すべきと思われる.
索引用語