セッション情報 ワークショップ6

未分化型早期胃癌の診断とESDの適応

タイトル W6-11:

分化型優位混在癌に対する当院の治療成績

演者 山下 聡(虎の門病院消化器内科)
共同演者 布袋屋 修(虎の門病院消化器内科), 貝瀬 満(虎の門病院消化器内科)
抄録 【背景】内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の普及とともに大きな病変も内視鏡的切除が可能となり,術後病理にて混在癌が認められることもしばしば経験されるようになった.一方で混在癌治療に関するエビデンスの蓄積はいまだ十分とは言えず,その取扱いについても一定の見解は得られていない.【目的・方法】当院において2005年4月より2011年12月までにESDを施行した1680病変のうち,胃癌1391病変(1172症例)を純粋な分化型腺癌1200病変(A群),分化型優位混在癌124病変(B群),未分化型腺癌および未分化型優位混在癌67病変(C群)の3群に分け,内視鏡治療成績,追加外科切除症例でのリンパ節転移の有無について検討を行った.【結果】平均腫瘍径はA群/B群/C群(以下同)=19.9mm/33.3mm/19.6mm,SM浸潤率は12.5%/46.5%/29.9%であり,B群は腫瘍径が大きく,SM浸潤が高率に認められた.局所完全一括切除率は96.5%/88.7%/88.1%,水平断端陽性率は2.5%/3.2%/6.0%,深部断端陽性率は1.1%/8.1%/7.5%であり,深部断端陽性例はB群,C群において多く認められた.リンパ管侵襲は1.8%/24.1%/10.4%,静脈侵襲は2.3%/16.9%/10.4%に認められ,B群,C群においていずれも高く特にリンパ管侵襲に関してはB群に高率に認められた.非治癒切除237病変のうち追加外科切除は142病変に対して行われ,11例にリンパ節転移陽性例を認めた.リンパ節転移陽性例のうち8例(72.7%)は脈管侵襲陽性例であった.【考察・結論】ESDにて切除された分化型優位混在癌に,結果として多くのSM浸潤癌が認められ,深部断端陽性例や脈管侵襲例が多く認められた.術前に未分化型癌の混在を完全に予想することは不可能であるが,分化型優位混在癌においてはtub2成分が優位な病変が多く認められており,生検やNBI拡大観察において上記の所見が認められる比較的大きな病変においては,混在癌の可能性を念頭に置く必要がある.そのような病変に対する治療に際しては,深達度診断が難しく,また生物学的悪性度が高い可能性も十分に考慮した上でESDの施行に当たるべきと考えられた.
索引用語