セッション情報 ワークショップ7

大腸腫瘍に対するESDの課題と今後の展開

タイトル W7-2:

当院におけるESDとEMRの治療成績から見た大腸ESDの適応

演者 豊嶋 直也(昭和大学横浜市北部病院消化器センター)
共同演者 工藤 進英(昭和大学横浜市北部病院消化器センター), 林 武雅(昭和大学横浜市北部病院消化器センター)
抄録 【目的】当院におけるESDとEMRの治療成績から大腸ESDの適応を検討した.【方法】2001年4月から2011年6月までに当院で内視鏡的切除または手術を施行され病理学的評価可能であった進行癌を除く腫瘍性病変14624病変の中で,内視鏡治療施行された20mm以上の1092病変を対象とした.治療方法別(EMR,EPMR,ESD)に治療成績(完全一括摘除率・偶発症・遺残再発)を比較検討した.【結果】対象1092病変の治療内訳はEMR/EPMRが283/537病変,ESDが272病変であった.完全一括切除率はEMR34.5%(283/820),ESD95.2%(259/272)であった.遺残再発率はEMR/EPMRは11.5%(94/820)でESD 0.4%(1/272)であった.なおESD群で再発をきたした1例は分割切除となった症例である.偶発症は,出血においてEMR/EPMRが2.8%(23/820)とESD 1.5%(4/272)に比し高率であったが,有意差は認めていない.穿孔は1.1%(9/820)/2.6%(7/272)とESDで高率であったがこちらも有意差を認めていない.直腸に限局すると一括切除率はEMRで50.3%(93/185),ESDで98.7%(74/75).偶発症は,出血がEMR/EPMRが18.4%(34/185)とESD 2.7%(2/75),穿孔はESD,EMR/EPMRともに認めず,遺残再発率はEMR/EPMRは11.5%(18/185)でESD 0%(0/75)であった.【結論】大腸腫瘍の多くはEMRで根治可能な病変であるため,大腸ESDの位置づけは困難である.最終目標を遺残再発予防のための一括切除とすると多くの病変が適応となるが,浸潤癌の治療を目的とすれば適応病変はかなり限られる.腺腫まで保険収載されたが,医療経済を考慮すると明らかな腺腫と診断できた病変はEMRの適応と考える.しかし,直腸は他部位に比し偶発症もほとんどなく治療時間も短いため,腫瘍径が大きい場合には再発リスクを考慮し相対的なESD適応と考えられる.
索引用語