セッション情報 ワークショップ7

大腸腫瘍に対するESDの課題と今後の展開

タイトル W7-3:

2cm未満の大腸腫瘍に対するESDの適応に関する検討

演者 大林 友彦(愛知県がんセンター中央病院消化器内科部)
共同演者 田近 正洋(愛知県がんセンター中央病院内視鏡部), 丹羽 康正(愛知県がんセンター中央病院内視鏡部)
抄録 【目的】現在の大腸ESDの保険適応は「最大径が2cmから5cmの早期癌又は腺腫」とされる.下限の2cmという数値はEMRで一括切除が可能な大きさと考えられるが,実臨床において2cm未満でも分割切除となり,遺残再発や正確な病理診断が困難となる病変をしばしば経験する.今回,2cm未満の病変に対するEMRとESDの成績を比較し,その妥当性を検討した.
【方法】対象は当院で2000年4月から2011年7月までに大腸EMRを施行した長径1cm以上2cm未満のIp型を除く大腸腫瘍729病変(EMR群)および2005年1月から2012年9月までに大腸ESDを施行した185病変中,長径が2cm未満の32病変(ESD群)とし,両群間の成績を比較検討した.なお,完全一括切除は,一括切除で病理学的に断端陰性とした.
【結果】平均腫瘍長径はEMR群:ESD群12.3 mm(10-19):13.9mm(7-19),肉眼型(隆起型/表面型)は542/187:6/26,癌/非癌は162/567:17/12で,ESD群で表面型,癌が多かった(P<0.01).一括切除率は83.7%(668/729):93.8%(30/32)で差は認めなかったが,完全一括切除率は67.9%(495/729):84.4%(27/32)で,ESD群で有意に高かった(P<0.05).EMR群で分割切除となり経過観察が可能であった36例のうち3例(8.3%)で遺残再発を認めた.うち2例は再EMRにて根治したが,1例は手術を要した.ESD群では現在のところ遺残再発は認めていない.EMR群の分割切除病変は一括切除病変に比し,大きく表面型が多かった(P<0.05).
【結論】2cm未満の病変でもEMRの完全一括切除率は低く,時に遺残再発例を経験することから,2cmに近く表面型,中でもLST-NGはESDを考慮する必要があると考えられた.
索引用語