セッション情報 ワークショップ7

大腸腫瘍に対するESDの課題と今後の展開

タイトル W7-5:

腫瘍径からみた大腸ESDの適応

演者 田沼 徳真(手稲渓仁会病院消化器病センター)
共同演者 西園 雅代(手稲渓仁会病院消化器病センター), 三井 慎也(手稲渓仁会病院消化器病センター)
抄録 【背景】内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は大きな病変の内視鏡的一括切除を可能とし,今後さらに普及していくことが予想される.大腸ESDは2012年4月に保険収載されたが,現時点での適応は腫瘍径20mmから50mmまでの病変とされている.【目的】保険収載された大腸ESDの適応の妥当性を検証する.【対象と方法】2007年4月から2012年6月までにESDを施行した大腸腺腫および癌157例159病変を対象とした.腫瘍径50mm以上をA群(n=20,腫瘍径50‐143mm,中央値52mm),腫瘍径50mm未満をB群(n=139,腫瘍径8‐49mm,中央値26mm)とし,1)局在,2)切除時間,3)一括切除率,4)病理組織学的診断,5)偶発症について両群間で比較検討した.なお,50mm以上の病変は保険収載以前の先進医療症例であり,すべての手技は熟練した2人の術者が行った.【結果】1)局在(C/A/T/D/S/R):A群4/4/1/0/4/7,B群16/28/26/16/22/31,2)切除時間:A群70‐350分(中央値120分),B群15‐220分(中央値60分)であり,A群で有意に切除時間が長かった.3)一括切除率:A群85.0%(17/20),B群87.0%(121/139)であり,両群間に差を認めなかった.4)病理組織学的診断(腺腫/粘膜内癌/SM1000μm未満/SM1000μm以深/不明):A群4/11/1/4/0,B群69/47/12/9/2,脈管侵襲陽性例:A群15.0%(3/20),B群2.9%(4/139)と,A群においてSM深部浸潤,脈管侵襲陽性の割合が有意に高かった.5)偶発症:A群5.0%(1/20,出血1,穿孔0),B群5.8%(8/139,出血4,穿孔4)であり,両群間に有意差はみられなかった.【まとめ】A群はB群と比較して切除時間が長かったが,一括切除率および偶発症発生率に有意差を認めず,大きな病変でも熟練した術者が行えばESDは安全に施行可能と思われた.ただし,A群においてSM深部浸潤率,脈管侵襲陽性率が有意に高く,術前深達度診断の精度向上が今後の課題と考えられた.
索引用語