セッション情報 ワークショップ7

大腸腫瘍に対するESDの課題と今後の展開

タイトル W7-6:

最近2年間の当院における大腸ESD症例の検討

演者 長尾 知子(がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科)
共同演者 小泉 浩一(がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科), 服部 公昭(がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科)
抄録 【背景】当院では2004年8月から2012年8月までに計529例のESDを施行しているが,処置具も進歩し,2012年4月から保険収載され今後一般化が予想される.【目的】成績が安定し中級者も施行開始した最近2年間のESD症例を解析し,その適応を再検討する.【対象と方法】2011年1月から2012年8月までに施行されたESD症例の臨床病理学的事項についてretrospectiveに検討し,導入期との比較も行った.【結果】ESD症例は168例170病変,男女比は91:79であった.病変の局在はC18,A39,T24,D10,S24,R55病変,肉眼型はIs/Isp 19/19,IIa34,LST-G(MIX)/(UNI)51/26,LST-NG17病変,その他3病変.病理学的一括切除率96%,病理組織学的診断は腺腫32,pM癌97,pSM1/pSM2 25/12病変だった.偶発症は術中穿孔3(A2,C1)例でいずれも保存的治療で軽快した.内視鏡的止血術を要した後出血は9例で輸血施行例はなかった.抗生剤を投与した発熱は25例だった.局在部位別偶発症発生率は発熱と出血併せてC13%,A21%,T8%,D30%,S25%,R31%であった.最大径2~5cm/5cm以上の病変で比較すると,偶発症20%/65%,分割切除率2%/18%,治療時間0.6~5(平均2)時間/2~13(平均5.3)時間であった.治療時間3時間以上を要した病変は28病変,うち4時間以上は16病変で,リスク因子してはIspまたは粗大結節を持つLST-G(MIX)であった.また,最大径5cm以上の病変が10病変で,長時間化症例では偶発症の頻度が高かった.導入期との比較では,処置具ではSBナイフJrの導入後は中級医でも治療完遂可能で,CO2の導入後は迷走神経反射・嘔吐の発生は激減した.【考察】最大径5cm以上の病変や粗大隆起を伴う病変では治療も長時間化し偶発症の頻度が高く,最大径2~5cmという適応は基準になる.一方5cm以上でも偶発症なく一括切除出来た病変の多くは粗大結節を持たないLST-G(UNI)であり,大きさの適応拡大は肉眼型を考慮すべきである.また右側に比し直腸病変は操作性がよく重篤な偶発症は少ないので,手術侵襲も考慮するとESDのよい適応と考えられた.
索引用語