セッション情報 ワークショップ7

大腸腫瘍に対するESDの課題と今後の展開

タイトル W7-9:

大腸ESDに対する保険適応の妥当性

演者 林 奈那(広島大学内視鏡診療科)
共同演者 田中 信治(広島大学内視鏡診療科), 茶山 一彰(広島大学消化器代謝内科)
抄録 【目的】大腸ESDは2012年4月から保険収載となったが,その適応は径2-5cmの早期癌または腺腫である.今回,大腸ESDの治療成績からその妥当性を検討する.【対象と方法】(1)2012年5月までに施行した大腸ESD 440例のうち,最近2年間182症例について病理学的不完全摘除と穿孔の危険因子について検討する.検討項目は,大きさ(径5cm未満/5cm以上),部位(結腸/直腸),病型(LST-G・Is/LST-NG),深達度(腺腫-SM微小浸潤癌/SM深部浸潤癌),線維化(F0-1/F2),術中出血(少/多),生検歴,前治療歴,内視鏡操作性(良好・普通/不良)とした.また,操作性関連因子について年齢,性別,大きさ,部位(結腸/直腸,ひだ上,屈曲部,正面視),腹部手術歴の有無について検討した.(2)2010年12月までに内視鏡的摘除した径2cm以上のLST 344例(ESD 131例,一括EMR 85例,分割EMR 128例)を対象に,局所再発率と再発病変の特徴を検討する.【結果】(1)完全一括摘除率は径5cm未満99%(137/139),径5cm以上91%(39/43),穿孔率はそれぞれ4.3%(6/139),7.0%(3/43)であり,大きさ別で有意差は認めなかった.不完全摘除因子は,SM深部浸潤,F2,前治療歴あり,内視鏡操作性不良で有意差を認めた.穿孔因子は,結腸,治療歴あり,内視鏡操作性不良で有意差を認めた.また,操作性不良因子は,結腸,ひだ上,屈曲部,腹部手術歴ありで有意差を認めた.(2)局所再発率は,ESD 0%(0/131),一括EMR 2.4%(2/85),分割EMR 12.5%(16/128)で,分割EMRが有意に高かった.腫瘍径別のEMR後局所再発率は,径2-5cm 4.8%(9/188),径5cm以上36%(9/25)であり,径5cm以上で有意に高かった.しかし,局所再発は全て腺腫で追加内視鏡治療で根治可能であった.【結語】大腸ESDの難易度は大きさには関連せず,大きさの制限は不要である.また,径2-5cmの腺腫に対するEMR後局所再発率は低く,再発病変も全て追加内視鏡治療で根治可能であるため,径2-5cmの腺腫全てにESDは不要である.
索引用語