セッション情報 |
ワークショップ8
炎症性腸疾患の病態解明を目指した新しいアプローチ
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タイトル |
W8-1:炎症性腸疾患における上皮再生機構の解明と粘膜再生治療への応用
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演者 |
岡本 隆一(東京医科歯科大学消化管先端治療学) |
共同演者 |
村野 竜朗(東京医科歯科大学消化器病態学), 渡辺 守(東京医科歯科大学消化器病態学) |
抄録 |
【背景・目的】近年,炎症性腸疾患の治療は正常な粘膜上皮の再生を達成する「粘膜治癒」が目標となっている.我々は先に炎症粘膜の再生におけるキーシグナルとしてNotch-Hes1シグナルを同定した.今回,同シグナルの活性化が炎症粘膜という特殊な環境に於いて上皮再生を促進し得る分子機構を明らかにする為,同シグナルと炎症性サイトカインとの相互作用が粘膜再生に果たす役割につき検討を行った.【方法】ヒト腸管上皮由来培養細胞に於いて活性型Notch及びHes1を発現誘導する系を用い,様々な炎症性サイトカインを添加した際の応答をレポーターアッセイにより解析した.同解析においてNotch-Hes1との協調が確認されたTNF-α及びIL-22につき,マイクロアレイ及び定量的RT-PCRにより協調的な制御を受ける遺伝子群を同定し,その制御機構を解析した.更に炎症性腸疾患患者における各シグナル経路の活性化と下流遺伝子群の発現を組織学的に検討した.【結果】腸管上皮細胞においてNotch-Hes1はTNF-αと協調してNF-kB依存的転写を促進し,かつIL-22と協調してSTAT3依存的転写も促進する機能を有していた.その結果,Notch-Hes1はTNF-αと協調してNF-kB依存的に幹細胞特異的遺伝子Olfm4の発現を誘導するのみならず,細胞死の誘導も抑制した.更にNotch-Hes1はIL-22と協調し,STAT3依存的に抗菌・細胞増殖活性を有するREGファミリー遺伝子群の発現分泌を促進した.潰瘍性大腸炎患者の炎症粘膜上皮において,Notch-Hes1,NF-kB,STAT3は何れも広汎な上皮細胞で活性化しており,かつOlfm4やREG1aも同部位で広汎に発現していた.【結論】Notch-Hes1シグナルはTNF-αやIL-22といった炎症性サイトカイン群によるシグナルを統合し,粘膜再生応答へと誘導・増強する役割を持つ可能性が考えられた.今回得られた知見に基づき,Notch-Hes1シグナル活性化を制御する化合物スクリーニングが進行中であり,粘膜治癒を促進する新規化合物の発見が期待される. |
索引用語 |
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