セッション情報 ワークショップ8

炎症性腸疾患の病態解明を目指した新しいアプローチ

タイトル W8-3:

Clostridium butyricumの腸炎抑制効果およびIL-10産生マクロファージ誘導能の検討

演者 林 篤史(慶應義塾大学消化器内科)
共同演者 金井 隆則(慶應義塾大学消化器内科), 日比 紀文(慶應義塾大学消化器内科)
抄録 [目的]近年,46種類のClostridium coccoides及びClostridium leptumの混合カクテルがIL-10産生制御性T細胞を誘導しマウス腸炎を抑制すること,ヒト炎症性腸疾患においてはこれらの腸内細菌が減少していることが報告されている.また,炎症性腸疾患の病態形成に腸管マクロファージの腸内細菌に対する過剰な免疫反応が大きく寄与している.本研究では,Clostridium butyricum(C.butyricum)の抗炎症効果および免疫学的メカニズムについて検討した.[方法]C.butyricumを正常無菌マウスへ投与し免疫応答を検討した.次にC.butyricumの炎症状態における免疫誘導能を評価するため,DSSにより腸炎を誘導した野生型(WT),TLR2-/-及びMyD88-/-マウスの粘膜固有層単核球(LPMC)と各種死菌体を共培養し,FACS解析及び培養上清中のサイトカインを測定した.DSS腸炎におけるC.butyricumの腸炎抑制効果を無菌およびSPF WTマウスを用いて検討した.さらにC.butyricumの腸炎抑制効果をRAG2-/-マウスを用いて解析し,IL-10中和抗体投与による影響を検討した.[結果]C.butyricumは制御性T細胞およびIL-10産生を誘導した.C.butyricumによって刺激されたcolitic WT LPMCはEnterococcus faecalisに比し有意にIL-10産生を誘導し,このIL-10産生能はcolitic TLR2-/-及びMyD88-/- LPMCでは消失した.FACS解析により,C.butyricumによるIL-10産生細胞は主にCD11b+F4/80+マクロファージであった.無菌およびSPFマウスにC.butyricumを投与することにより,DSS腸炎を改善した.またC.butyricumは,RAG2-/-マウスにおけるDSS腸炎を抑制しその腸炎抑制効果はIL-10中和抗体の投与により消失した.[結論]C.butyricumは炎症時においてTLR2/MyD88経路を介してIL-10産生CD11b+F4/80+マクロファージを誘導し腸炎抑制効果を示した.以上,C.butyricumはProbioticsとしての炎症性腸疾患への応用が示唆された.
索引用語