セッション情報 ワークショップ8

炎症性腸疾患の病態解明を目指した新しいアプローチ

タイトル W8-4:

腸内細菌Faecalibacterium prausnitziiとクローン病活動性との関連について

演者 藤本 剛英(滋賀医科大学大学院感染応答免疫調節部門(消化器免疫))
共同演者 藤山 佳秀(滋賀医科大学消化器内科), 安藤 朗(滋賀医科大学大学院感染応答免疫調節部門(消化器免疫))
抄録 【背景】Clostridium cluster IVに属するFaecalibacterium(F)prausnitziiが術後クローン病の再燃に対して抑制的に作用することが報告されている.今回,クローン病の便中F. prausnitzii量を定量PCR法により測定するとともに,臨床パラメーターとの関連を検討した.
【方法】2012年1月から6月まで当院にて診療されたクローン病患者47名を対象とした.便中DNAを採取し,16S rRNA universal primerおよびF. prausnitzii specific primerを用いて定量PCRを施行した.便中F. prausnitzii量を16s rRNA量で標準化し,CDAI,CRP,赤沈,血清アルブミン値,ヘモグロビン値との関連について検討した.腸内細菌叢の構成をT-RFLP(Nagashima法)にて比較した.
【結果】便中F. prausnitzii量は,健常人と比較してクローン病患者では有意に低値をしめした(p=0.004).標準化便中F. prausnitzii量0.00029をcutoff値としてクローン病患者を2群に分けると,F. prausnitzii高値の群で有意にCDAI(99.6±107.8 vs. 48.59±35.5),CRP(1.84±2.78 vs. 0.20±0.26 mg/dL)(p<0.01),ESR(22.6±28.0 vs. 10.0±9.9mm/h)(p<0.05),アルブミン値(3.57±0.74 vs. 4.09±0.37 mg/dL)(p<0.01)の改善を認めた.ヘモグロビン値は改善傾向を認めたが有意差は認めなかった(12.8±2.2 vs. 13.8±4.1 mg/dL).T-RFLP法による解析では,健常人とクローン病は異なる腸内細菌叢の構成を示し,Clostridium cluster IV,Bacteroidesの低下,Bifidobacteriumの増加を認めた.
【結語】F. prausnitziiは,健常人と比較しクローン病腸内細菌叢で有意な減少を認めた.また,F. prausnitziiの減少は,クローン病の病勢の悪化と関連する.
索引用語