セッション情報 |
ワークショップ8
炎症性腸疾患の病態解明を目指した新しいアプローチ
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タイトル |
W8-5:腸内細菌由来物質の腸上皮内輸送を介した新しい宿主―細菌相互作用機構の同定と炎症性腸疾患病態への関与
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演者 |
藤谷 幹浩(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学) |
共同演者 |
嘉島 伸(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学), 高後 裕(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学) |
抄録 |
【目的】炎症性腸疾患(IBD)の病態に腸内細菌叢の異常が関係すると考えられている.一方,IBD患者ではレセプターやトランスポーター等の細胞膜分子の遺伝子多型が高率に認められるが病態との関係は不明な点が多い.我々は,腸内細菌の分泌物が宿主腸管の細胞膜分子を介して上皮内に取り込まれ,腸管恒常性維持やIBD病態の改善に寄与すると推測している.本研究ではバシラス菌,乳酸菌を対象としてこの仮説を検証する.【方法】1.バシラス菌,乳酸菌の培養上清をCaco2/bbe細胞に添加し,Heat shock protein(Hsp)の発現誘導を確認した.これら培養上清を各種カラムで分離し,Hsp誘導能をもつ分画内の物質の構造解析を行い,菌由来活性物質を同定した.2.活性物質をマウス摘出腸管に添加し,バリア機能の変化を調べた(マンニトール漏出試験).3.標識した菌由来活性物質をCaco2/bbe細胞に添加し,取り込みを確認した.各種インヒビターを加え細胞膜分子を阻害し,取り込みを仲介する分子を決定した.4.DSS腸炎モデルに菌由来活性物質を注腸投与し,腸管障害の程度,累積生存率を検討した.【成績】1.バシラス菌,乳酸菌由来の活性物質はCompetence and sporulation factor(CSF)およびポリ燐酸であった.2.CSF,ポリ燐酸は腸上皮バリア機能を増強した.3.蛍光標識したCSF,ポリ燐酸は,それぞれ有機イオントランスポーター(OCTN2)およびインテグリンβ1を介して細胞内に取り込まれた.4.CSF,ポリ燐酸はDSS腸炎の腸管障害を改善し,累積生存率を延長した.【結論】腸内細菌由来の活性物質を同定し,これらがOCTN2などの細胞膜分子を介して腸上皮内に取り込まれるという新しい生体機構を明らかにした.OCTN2はIBD患者で高率に遺伝子多型が認められており,本生体機構はIBDの病態に強く関与すると考えられた.また,これら菌由来物質はマウス腸炎の腸管障害を改善したことから,新規IBD治療への応用が期待される. |
索引用語 |
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