セッション情報 ワークショップ8

炎症性腸疾患の病態解明を目指した新しいアプローチ

タイトル W8-6:

Gene Related to T cell Anergy in Lymphocyte(GRAIL)陽性T細胞は腸炎に対して保護的に作用する

演者 向井 章(大阪大学消化器内科学講座)
共同演者 飯島 英樹(大阪大学消化器内科学講座), 竹原 徹郎(大阪大学消化器内科学講座)
抄録 【背景】腸管免疫系の恒常性の維持には免疫寛容が重要な役割を果たしている.GRAIL(Gene Related to Anergy In Lymphocyte)は,CD4陽性T細胞の不応答化に必須の因子として同定されたユビキチンE3リガーゼである.これまで,種々の自己免疫性疾患との関与が報告されているが,炎症性腸疾患との関与は未だ明らかでない.【目的】クローン病におけるGRAIL発現とその役割を明らかにする.【方法】当院通院中のクローン病患者の末梢血,及び腸管手術標本でのGRAILの発現を評価した.慢性腸炎モデルマウスとして,IL-10ノックアウトマウス,DSS腸炎マウスを用いた.GRAIL強制発現ベクターを作成し,GRAILを強制発現させたT細胞株を作成した上,DSS腸炎マウスに経静脈的投与し,体重変化,腸管長,組織像を評価した.また,DSS腸炎マウスに対し,蛍光タグを付加したGRAILを強制発現させたT細胞株を経静脈的投与し,GRAIL陽性細胞の分布をin vivo imaging system(IVIS)にて評価した.【結果】クローン病及び,慢性腸炎モデルマウスでは,末梢血CD4陽性T細胞において非腸炎群と比してGRAILの発現低下を認めた.これに対して,腸炎を発症した粘膜固有層においてはGRAIL蛋白陽性の細胞を多数認め,末梢血CD4陽性T細胞とは反対の分布をとることが明らかとなった.また,免疫染色によりGRAIL陽性T細胞が,腸管粘膜固有層の炎症部位に集積している事が確認された.GRAIL導入T細胞移入群のDSS腸炎マウスでは,GRAIL非導入コントロール群と比して,大腸炎症が改善する傾向を認めた.IVISによる評価では,投与後3時間よりGRAIL発現細胞の腹部への集積が認められた.【結論】GRAIL陽性T細胞は,炎症部位に集積する事により,炎症に対して抑制的に働く可能性が示唆された.
索引用語