セッション情報 ワークショップ8

炎症性腸疾患の病態解明を目指した新しいアプローチ

タイトル W8-7:

Carbonic anhydrase Iを標的抗原とした炎症性腸疾患に対する新規治療法の開発

演者 山西 浩文(愛媛大学医学部附属病院腫瘍センター)
共同演者 池田 宜央(愛媛大学医学部附属病院光学医療診療部), 阿部 雅則(愛媛大学先端病態制御内科学)
抄録 【目的】炎症性腸疾患への関与が想定されているcecal bacterial antigen(CBA)についてプロテオーム解析により主要抗原を探索し,同抗原を用いた新規治療法の開発を目的とした.【方法】CBAの主要抗原は2次元電気泳動法とMALDI/TOFMSにより同定した.腸炎モデルはSCIDマウスにCD4CD25T細胞を腹腔内投与して作成した.1)制御性樹状細胞(Reg-DC)療法:Reg-DCはBalb/cマウス骨髄細胞をIL-10,TGF-β,GM-CSFで8日間培養したのち,LPSとCBAの主要抗原で24時間共培養して作成した.CD4CD25T細胞投与時にReg-DCを腹腔内投与した.2)経口免疫寛容療法:SCIDマウスにCBAの主要抗原(0.3 mg/日)を5日間連日経口投与し,投与終了2日後に腸炎を誘発した.腸炎誘発後4週目における体重変化,腸の長さ,腸炎の組織学的進展度を検討した.また,腸間膜リンパ節のFoxp3CD4CD25T細胞数,RORγt,IL-17mRNA発現,培養上清中サイトカイン濃度について解析を行った.【成績】プロテオーム解析により,CBAの主要抗原はcarbonic anhydrase I(CA-I)と同定した.Reg-DC療法及びCA-Iを用いた経口免疫寛容療法は体重変化,腸の長さ,腸炎の組織学的進展度において腸炎を抑制した.腸間膜リンパ節におけるFoxp3CD4CD25T細胞数は増加し,RORγt,IL-17mRNA発現,IL-6,IL-17,TNF-α産生は低下していた.【結論】CA-Iを用いた制御性樹状細胞療法,経口免疫寛容療法はCD4CD25T細胞移入腸炎モデルマウスの腸炎を抑制した.炎症性腸疾患においてCA-Iは新たな治療標的になると考えられた.
索引用語