セッション情報 |
ワークショップ8
炎症性腸疾患の病態解明を目指した新しいアプローチ
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タイトル |
W8-8:ヒト炎症性腸疾患におけるサイトカインプロフィールの解析
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演者 |
井星 陽一郎(九州大学大学院病態制御内科学) |
共同演者 |
中村 和彦(九州大学大学院病態制御内科学), 伊原 栄吉(九州大学大学院病態制御内科学) |
抄録 |
【目的】炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎(以下UC)とクローン病(以下CD)に大別されるが,その病態には不明な点が多い.個々の症例の病型,反応性,予後,合併症などの「表現型」は非常に多様であり,その背景には多数の(疾患感受性)遺伝子の複雑な関与が推察される.遺伝的な背景のもとに腸管局所においてヘルパーT細胞(以下Th)を中心とした生理的,病的な免疫反応が惹起され,多様な表現型が観察されると考えられる.今回我々はUC,CDの腸管局所粘膜におけるTh1,Th2,Th17,Treg各系統のサイトカイン,転写因子等の発現を解析した.【方法】UC(n=49),CD(n=20)の患者の炎症部および非炎症部の粘膜より,また対照群として非腸炎の患者(n=10)の大腸粘膜より内視鏡下に生検を行った.生検片(UC,CD,対照群でそれぞれ,合計92,40,22ヶ所)より定量的RT-PCRにて各種サイトカイン等のmRNAの発現を解析した.また臨床的情報との関連を検討した.【結果】内視鏡下の1-2個の生検片より多くのターゲットの発現の解析が可能であった.UC,CDとも炎症部粘膜ではIFNγ,IL17,IL21,IL22等のエフェクターサイトカインの高発現を認めたが,前2者では相対的にCDではよりIFNγが,UCではよりIL17が高発現であった.UCではIL13も比較的高発現であった.対照群ではそれらは低発現であったがTbet,GATA3,RORC,FOXP3などの転写因子は比較的高発現であった.興味深いことに,UCとCDの非炎症部における比較的低発現のサイトカインの中にも,対照群に比べ有意な発現の差を捉えることが可能なものがあった.【結論】内視鏡下生検サンプルを用いた定量的RT-PCRは少量のサンプルから多くのターゲットの発現解析が可能であり,炎症性腸疾患の複雑な病態における多様なターゲットを網羅的な解析する方法として有用であると考えられる.症例の臨床的情報との関連を含めて解析結果を報告する. |
索引用語 |
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