セッション情報 |
ワークショップ8
炎症性腸疾患の病態解明を目指した新しいアプローチ
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タイトル |
W8-9:炎症性腸疾患とその癌化におけるIL-6トランスシグナルの役割
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演者 |
光山 慶一(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門) |
共同演者 |
松本 敏(ヤクルト中央研究所), 佐田 通夫(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門) |
抄録 |
目的:我々は,IBD患者において,腸内細菌の刺激によりマクロファージから産生されるIL-6や可溶性IL-6受容体(sIL-6R)の増加がみられ,両者は結合してIL-6・sIL-6R複合体を形成していること,さらに,IL-6・sIL-6R複合体の刺激により,T細胞においてIL-6トランスシグナルを介したSTAT3活性化がみられることを報告した.今回,IL-6トランスシグナル促進剤と抑制剤を動物モデルに投与し,IBDとその癌化におけるIL-6トランスシグナルの役割を検討した.方法:SAMP1/Yitマウスと慢性DSS腸炎マウスを用い,腸組織でのIL-6,IL-6受容体(IL-6R,gp130),STAT3の発現を検討した.これらのモデルに対し,IL-6トランスシグナル促進剤hyper IL-6(IL-6・sIL-6R複合体)を,IL-6トランスシグナル抑制剤sgp130-Fcを投与し,腸炎と大腸癌に及ぼす効果を検討した.結果:SAMP1/Yitマウスにおいて,CD4+T細胞でのgp130,phospho-STAT3の高発現がみられた.hyper IL-6投与により腸炎は増悪し,sgP130-Fc予防的・治療的投与により腸炎は改善した.慢性DSS腸炎の癌化モデルにおいて,CD4+T細胞と癌細胞でのgp130およびphospho-STAT3の高発現がみられた.sgp130-Fc予防的投与により大腸癌発生は減少した.結語:IBDモデルではIL-6トランスシグナルの活性化がみられ,IL-6トランスシグナル促進剤により腸炎と癌化が増悪し,一方,その抑制剤により軽快することから,IBDの病態形成にIL-6トランスシグナルが関与していることが示唆された.さらに,IL-6トランスシグナルがIBDの治療標的となり得ることが示唆された.これら結果を踏まえ,sgp130-Fcの臨床試験がまずドイツで開始される予定である. |
索引用語 |
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