セッション情報 ワークショップ8

炎症性腸疾患の病態解明を目指した新しいアプローチ

タイトル W8-10:

IBDに合併するCMV感染の病態生理学的意義に関する基礎的検討―新規CMV感染合併IBD動物モデルを用いた病態解析―

演者 松浦 稔(京都大学消化器内科学)
共同演者 松村 佳代子(京都大学消化器内科学), 仲瀬 弘志(京都大学消化器内科学)
抄録 【目的】サイトメガロウイルス(CMV)感染は炎症性腸疾患(IBD),特に潰瘍性大腸炎(UC)にしばしば合併することが臨床的に知られている.しかしながら,CMV感染がIBDの病態生理に与える影響については必ずしも明らかではない.そこで,今回我々はCMV感染合併IBD動物モデルを用いて,CMVの感染動態および慢性腸炎に及ぼす影響を検討した.【方法】UCモデルであるTCRα KOマウス(1週齢)にマウスサイトメガロウイルス(MCMV)を腹腔内接種した.2週齢および4週齢の感染マウスにおけるウイルス抗原の発現を検討し,MCMVの潜伏感染への移行を確認した.次に,1)MCMV感染が慢性腸炎に与える影響(12週齢および24週齢の感染マウスにおける腸管の組織学的所見ならびに炎症性サイトカインの遺伝子発現),2)各臓器(腸管,肝臓,脾臓)におけるMCMVの感染動態(MCMV免疫染色),3)腸管におけるMCMV感染細胞の同定(蛍光免疫染色),を検討した.【結果】1)各臓器(腸管,肝臓,脾臓)においてMCMV感染1週後に認めたウイルス抗原陽性細胞は感染4週後にはすべて消失した.2)非感染マウスと比較し,MCMV感染マウスでは組織学的腸炎の増悪を認め,腸管での炎症性サイトカイン(IL-13,TNF-α,IFN-γ,IL-6,IL-17)の遺伝子発現も増強していた.3)MCMV感染マウスでは腸管優位にウイルス抗原陽性細胞が再出現し,腸炎の進展とともにその細胞数が増加した.4)腸管組織に認められたMCMV陽性細胞はその多くがPDGFR-β陽性のperivascular stromal cellであり,これらの細胞は免疫担当細胞の遊走に重要なCXCL12を共発現していた.【結語】CMV感染合併IBD動物モデルでは,腸炎の進展に伴いCMV感染細胞が腸管局所で有意に増加し,慢性腸炎の増悪を認めた.IBDに合併するCMV感染は免疫担当細胞の腸管局所への遊走を介して腸炎増悪の病態形成に関与する可能性が示唆された.(共同研究者:浜松医科大学再生・感染病理学 小杉伊三夫先生)
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