セッション情報 ワークショップ9

炎症性腸疾患の内科的治療戦略と外科との接点

タイトル W9-4:

難治性潰瘍性大腸炎における手術回避因子の検討

演者 伴 宏充(滋賀医科大学消化器内科)
共同演者 安藤 朗(滋賀医科大学大学院消化器免疫分野), 藤山 佳秀(滋賀医科大学消化器内科)
抄録 【目的】難治性潰瘍性大腸炎に対する寛解導入療法にcalcineurin inhibitors(CNIs:シクロスポリン,タクロリムス)を投与する機会が増えているが,治療抵抗性や再燃により手術回避が困難な症例にしばしば遭遇する.我々は寛解導入療法にCNIsを投与した症例を対象に,手術回避因子について検討を行った.【方法】2000年1月以降,中等症から重症の難治性潰瘍性大腸炎に対する寛解導入療法でCNIsを投与した71人(男性42例,女性29例,シクロスポリン56例,タクロリムス15例,平均罹病期間49.6ヵ月,平均観察期間63.5ヵ月)を対象とした.CNIs投与開始時の年齢,罹病期間,臨床病型,罹患範囲,重症度(Seo indexで評価),ステロイド総投与量,C7-HRP,前治療の内容,投与開始2週間後の治療反応性がその後の手術回避に与える影響について検討を行った.【成績】CNIsによる寛解導入率は62.0%(44人),手術回避率は52.1%(37人)であった.手術回避群では,手術群と比較して治療反応性が良好(Seo indexで150 point以下もしくは治療前と比較して70 point以上の減少)でC7-HRP陰性例が有意に多かった.年齢や臨床病型,罹患範囲,重症度,ステロイド総投与量,前治療の内容には関連がなかった.また,罹病期間が長い症例,C7-HRP陽性例では治療反応性が悪かった.【結論】CNIsは難治性潰瘍性大腸炎に対して高い寛解導入効果および手術回避効果を示した.初期の治療反応性が良い例やC7-HRP陰性例では手術回避例が多かった.また,罹病期間の長い症例,C7-HRP陽性例では治療反応性が悪く手術へ移行する症例が多いため,外科手術のタイミングを逃さぬようより慎重なフォローが必要であると考えられた.
索引用語