セッション情報 ワークショップ9

炎症性腸疾患の内科的治療戦略と外科との接点

タイトル W9-8:

潰瘍性大腸炎術後回腸嚢炎に対する抗生剤反応性予測因子の検討

演者 荒木 俊光(三重大学消化管・小児外科学)
共同演者 内田 恵一(三重大学消化管・小児外科学), 楠 正人(三重大学消化管・小児外科学)
抄録 【背景】潰瘍性大腸炎術後の回腸嚢炎の一部には,治療依存性あるいは抵抗性を示す症例が存在する.【目的】回腸嚢炎基本治療のシプロフロキサシン(以下CPFX)投与後の経過を追跡し,CPFX抵抗性を示した症例の特徴と,その発生予測因子を明らかにすることを目的とした.【方法】当施設で大腸全摘回腸嚢肛門吻合術が施行された潰瘍性大腸炎患者213例中,modified pouchitis disease activity index(mPDAI)≧5の回腸嚢炎診断基準を満たした62例を対象とした.CPFX治療の反応性性と,臨床病理学的因子(性別,年齢,潰瘍性大腸炎病態,術前治療,手術成績,術前血液検査成績,初回発症時m-PDAI)との関連を検討した.【結果】回腸嚢炎の発症は62例であった.初回発症時,全例にCPFX400mg~600mg/日の経口投与が行われた.再燃の有無にかかわらず,CPFX治療継続有効(CPFX反応群)は39例(62.9%),治療に抵抗し他剤への変更を要した(CPFX抵抗群)のは23例(37.1%)であった.CPFX抵抗群のうち18例はセフカペンピボキシル,4例はメトロニダゾール,1例はアザチオプリンに反応した.2群間の比較では,術前TPとAlbはCPFX抵抗群で有意に低値を示し(6.0±0.6 vs. 6.7±1.0g/dl p=0.008,3.3±0.6 vs. 3.7±0.7g/dl p=0.04),術前PltとCRPは有意に高値を示した(39±13 vs. 31±11×103/μl p=0.04,2.4±3.8 vs. 1.0±1.8mg/dl p=0.01).単変量解析では,術前の病悩期間≧8年(OR=3.7 p=0.04),Alb≧3.5 g/dl(OR=7.8 p=0.0007),およびCRP≧0.3 mg/dl(OR=4.7 p=0.01)がCPFX抵抗群の予測因子であった.多変量解析では,術前CRPのみが有意な因子であった.【結論】潰瘍性大腸炎術後回腸嚢炎発生例において,術前の病悩期間,栄養状態,病勢は,CPFX抵抗性に関連することが示唆された.
索引用語